米政府によるビッグスリー救済案が最終審議に入った。しかし、果たして救うべきかどうかについては、米国内でも意見は二分されている。ヤーマックNY大学教授は反対派の急先鋒。破産によって資源の再配分が進むほうが米国のためになると主張する。
デヴィッド・L・ヤーマック ニューヨーク大学教授 |
米国政府によるビッグスリー救済案は、間違った施策であると声を大にして言いたい。米国の自動車メーカーは1970年代以来、投資家に対して価値を創造することを怠ってきた。そんな業界にこれ以上投資し続ける必要は、はっきり言って、ゼロだ。
そもそも米国はすでにサービス経済に移行ずみ。自動車産業の経済力はざっと70~80%縮小している。フォード・モーターの状況はまだましとはいえ、ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーを加えたビッグスリーはこの際破産し、その資産や労働力が再分配される方が米国経済にとっては健全な選択と言えよう。
議会はビッグスリーに対して12月初頭までに新たな事業計画を提出するように命じた。だがこれは議員らのジェスチャーと見るべきだ。本当は救済などしたくないが、却下するには理由が欲しい。しかも2年後の選挙の際に少なくとも努力したことを印象づけたい。だからそうしたプロセスを踏もうとしているのにすぎない。
ビッグスリーはそんな悠長なことをしている場合ではないと焦っているだろうが、国民を納得させるに足る事業計画をまとめられるとも思えない。結局、議員らはそっぽを向き、破産してしまう可能性が高いと、私は見ている。
では、ビッグスリーが破産すると何が起こるのか。
むろん、多くの工場やディーラーは閉鎖されるが、消費者にはクルマが必要だ。だから彼らは日本車や韓国車のディーラーへ向かう。ビッグスリーの従業員は再配分されていく。このプロセスがどのくらいの時間を要するのかは不明だが、これはすでに過去数十年にわたってゆっくりと起こっていることであり、破産によって加速化されるにすぎない。
もちろん多くの従業員が職を失い、混乱は起こる。だが、米国の実態経済が壊滅的な打撃を受けるかというと、そんなことは決してないと断言しよう。