「紙幣の供給量を増やしたい国」VS
「それに対抗する銀行」

 イギリスでは、金細工師が発行する金銀の預かり証が紙幣の起源とされます。名誉革命で即位した国王ウィリアム3世は、フランスとの植民地戦争による財政赤字に苦しみ、国債を引き受けさせるため、ロンドンの資本家グループにイングランド銀行の設立を許可しました。

 イングランド銀行が王から得たものは、紙幣ポンドの発行権と国債の利払いです。これはつまり、国の借金ともいえる国債を引き受けることが、中央銀行設立の動機だったことを意味します。

 イングランド銀行はずっと民間銀行として存続し、19世紀に唯一の発券銀行となりました。国有化されたのは第二次世界大戦後です。

 以上のように、政府が直接、通貨発行権を握ってしまうと、紙幣の乱発によりインフレを招きやすくなります。そこで、銀行に国債を引き受けさせ、代わりに通貨発行権を独占させたのです。

 この仕組みは、日本をはじめ、多くの国で適用されて、紙幣の供給量を増やしたい政府と、それに抵抗する中央銀行との駆け引きは、今も各国で続いています。

(次回掲載は、12月2日の予定です)


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