実はTPPは
形を変えたブロック経済だった

ヨーロッパのスパゲッティ・ボールの図。一目で複雑だということがわかります。
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 では、TPPやFTA(Free Trade Agreement 自由貿易協定)は自由貿易を目指す最適な方法なのでしょうか。バグワティは「違う」と言います。

 二国間でPTA(Preferential Trading Area 特恵貿易地域)が締結され、それぞれの国が他の異なった国々と相互条約を結び、それら相手国が今度は他の国々と条約を結び、(略)特恵の迷路状態である。(115ページ)

 この条約の迷路をバグワティは「スパゲッティ・ボール」と名付け、手に負えないほどこんがらがっている、と続けます。さらに、

 名前こそ自由貿易ではあるが、FTAは非加盟国の生産者に対する差別を拡大している。一九三〇年代にも、同じような非協調のもとで、自国の生産者に有利になるように差別する保護主義を追求して大混乱が生み出された。(121ページ

 つまり、これらは自由貿易体制ではなく形を変えたブロック体制であり、保護主義だと言いたいのでしょう。

 本書が出版された2002年から2004年前後、反グローバリズムの風が強く吹きました。自由貿易が格差を拡大し、貧困を助長し、貧しい国はますます貧しくなり、農業は滅んでいく、という抗議運動が巻き起こります。10年後の現在でもときおりフランスやアメリカで大規模なデモが起きていますね。グローバリズム=自由貿易=格差拡大、という図式は今日でもよく聞く議論です。

 バグワティはデモに巻き込まれたこともあるそうです。自由貿易論者として名高いため、格好の標的になってしまうのです。