@cosmeで評価が高い商品が
売れる構造をつくりたかった
保田 仕切り直しの成長のストーリーですが、仕切り直したあとのストーリーの内容について教えてください。
菅原 基本的には、お話した通り、ディスプレイ広告中心からブランディング広告を中心につくり直したというところです。もうひとつは、きちんとモノが売れるメディア媒体にしようということでした。そのときのチャレンジがまだ赤字の新規事業だった実店舗運営だったんです。@cosmeのサイト内で評価が高い商品が世の中で売れるという構造を作りたかったんですよ。ハッキリ言うと、@cosmeで評価が高い商品が全然売れていないケースが多かったんですよ。なぜならば、小売店では棚割りで売れ行きが決まるんですが、棚割りの決定に消費者のニーズ・ウォンツが殆ど影響していないように思えたんです。世の中のお店の棚割りの意思決定に消費者の声を取り入れるために、我々が自らやってしまおうと実店舗を始めたんです。
田中 そういう経緯だったんですね。
保田 すごく基本的なことをお聞きしますが、どんなお店なのでしょう?
菅原 当社の実店舗は5店舗ありますが、可能なかぎり@cosmeのサイトの考え方や、ランキングに合わせたお店づくりをしています。しかしながら、化粧品メーカー様の流通戦略上は当社の店舗で販売できないものもあるんですね。ただ、そういう商品も一応店頭には置いてあり、テスターとして使っていただくことはできます。テスターの値札に「この近くでは●●デパート一階の〇×△(ブランド名)カウンターでご購入いただけます」と書いてあったりするんです。また、店頭に置いてある商品の95%を超える商品全てをお試しいただくことができます。今まで知らなかった化粧品に出会うことができるのが@cosmeなら、お店でもそうあるべきと考えており、洗面台を店舗内に用意したり、コットン・ティッシュなど自由にお使い下さい、というふうにしています。
保田 実際に実店舗では、@cosmeのランキングを反映した商品が売れるようになっているということですか?
菅原 そうなりました。そのようなお店が今まで世の中になかったので、相当沢山の業界関係者と思われる方々が視察に来ていただいているようで、化粧品店にしては男性のお客様もたくさんいらっしゃいます(笑)。
田中 あぁ、わかりますよ。ネクタイしてスーツ着て、という感じですよね(笑)。私も、化粧品会社のお手伝いをしたことがありましたが、百貨店1階のコスメカウンターを回っていましたからね。私の場合、週末はコスメカウンターに座って、美容部員のセールストークを聞いてサンプルもらっていましたけど(笑)。
保田 それで実店舗のビジネスも5-6%の営業利益が出ているんですものね。
菅原 そうですね。
保田 こうしてお話しをお聞きすると、アイスタイルさんは事業ポートフォリオがいいですよね。
菅原 まだまだやらなければいけないことだらけです。資本市場にとっては、当社の比較対象は別のカテゴリーのユーザー投稿サイトの運営企業たちになります。比較対象にされる企業は、営業利益率が50%強というような強烈なビジネスモデルです。我々はそうした企業と比較されるので、PERが圧倒的に下がるんですね。機関投資家からは、短期的に利益効率を高めるような意見をいただくこともあるのですが、それはサステイナブルじゃないと考えているんですよ。「我々は業界を変えていくバーティカル(特定の業界に特化し深堀りする)プラットフォームだから、メディア事業がキャッシュカウ(稼ぎ頭)として成り立っています」「ユーザー課金はきちんと打ち手を打っているのだから、結果が出るまで無理だと決めつけないでください」というような説明をしながら理解を得ようとしています。
保田 今後、やはりユーザー課金を伸ばしていくんですか?
田中 この間の決算説明会で、吉松さん(アイスタイル代表取締役兼CEO)が一生懸命、何度も説明されていましたよね(笑)。