村田道宣
写真 加藤昌人

 友禅染めは、型紙で模様を写し取る型友禅の技法が明治時代に考案され、大量生産が可能となった。だが、村田道宣は下絵から、色つけ、仕上げの刺繍まで、一つひとつを手作業で作り上げる、手描き友禅にこだわる。

 色が混じり合うのを防ぐ「糊置き」、地色を刷毛で染める「引き染め」など手描き友禅は20幾つもの工程に分かれ、それぞれに専門の職人がいる。「細かいところまで自分の思いどおりの作品にしたい」と、村田はその全工程をほとんど一人で仕上げる。

 京友禅の図案家だった父の使いで、子どもの頃からしばしば職人の家を訪ねた。そこで、何時間も飽きることなく仕事ぶりを眺めていた。その頃の記憶を頼りにすべて独学で技を身につけていった。

 道宣の名を高めた「結晶染め」の技法は、5年以上の歳月をかけて編み出した。吸水性のよい桐の木くずを1週間水に浸してあくを抜き、半乾燥状態の生地の上にまいて染料を吸い取らせる。独特のぼかしが生まれ、手描きの模様が立体的に、かつ柔らかく浮かび上がる。「これがないと全体が光らない」。

 次男・康二が「手描き友禅のジーンズを作りたい」と恐る恐る相談してきたとき、「友禅が生きるならそれもいい」と答えた。12歳になる孫娘も跡を継ぐと言い始めた。「まだ小さい女の子のことだから」と言いつつ、伝統に革新を積み重ねてきた作家は、目を細めた。


(ジャーナリスト 田原 寛)


村田道宣(Dousen Murata)●京友禅作家 1942年生まれ。高校卒業後、友禅職人の父に弟子入り。76年、彩芸展で京都市長賞。81年、日本染織作家展にて日本経済新聞社賞。2000年経済産業大臣認定「伝統工芸士」、03年京都府知事表彰「京の名工」、08年厚生労働大臣表彰「現代の名工(卓越した技能者)」。