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「突然のことで申し訳ありませんが、別の道を見つけようと思います」
今年10月、パナソニックの車載用電池事業の技術責任者が、そんなあいさつを同僚や上司にした後で姿を消した。
男の名前は、能間俊之。旧三洋電機の電池事業で活躍してきたことで知られており、近年はフォード・モーターやフォルクスワーゲンなど一流自動車メーカーのハイブリッド車や電気自動車に搭載する車載用電池の技術責任者として奔走してきた人物だ。
徹底したブラックボックス化(機密化)を施した加西工場(兵庫県)の技術トップとして、唯一「技術総括」の肩書を持つエンジニアだった。
「絶対に外に出してはいけない人材として、名前すらメディアに出ないよう気をつけていた」(パナソニック関係者)
というのも、パソコンや携帯電話などに使う民生用リチウムイオン電池では、サムスンSDIやLG化学など韓国勢に完敗。市場シェアを一気に逆転された中で、この車載用電池だけは、唯一日の丸メーカーに勝ち目のある「最後のとりで」とされているからだ。
しかし、この能間氏の次の職場を周囲は誰も把握できず、ついに「経済産業省の一部でも、海外勢に引き抜かれたのではと問題になっている」(関係者)。
その真相はまだ判然としていないが、憶測が飛び交う背景には、パナソニックの社内における三洋出身者の人事面での“冷遇”があるとの見方は根強い。