このところ上海では、新たなショッピングセンターが続々とオープンしている。目抜き通りの南京西路や淮海中路では、日本では見たこともない“海外高級ブランドてんこ盛り”の超豪華商業施設が点在。警備員が厳重にガードする、冷たく重い扉を押し開けば、人を圧倒するかのようなきらびやかな空間が広がる。「力の限りゴージャスを目指す」、それが上海における市場の要求であることが窺える。
特権階級のための商業施設が林立
一般市民はネットショッピングに走る
高級化を極め、市民を寄せつけない、“特権的商業施設”の主要顧客には「役人への付け届け」を狙う企業経営者たちも含まれ、「その比重は決して小さくはない」(某ブランドの管理職)という。こうした施設の拡大は、「上海経済を動かす特権的人々」の存在をあからさまに物語っている。
上海市民は意外にも外出を嫌う。市の中心部に居住していれば別だが、日本の首都圏居住者に見るような、「土日の買い物」「休日の行楽」という習慣は根付いていない。多くの世帯において優先すべきは子どもの学習時間であり、そのための交通費を含めた節約である。また、繁華街に出たところで“特権階級御用達”の店しかなく、地価がもろに商品単価に跳ね返る昨今は、買い物という楽しみすら得難いものになってしまった。ここ数年で、個人消費者向けネットショッピングの売り上げが急激に伸びた背景には、このような要因もあるといえる。
そんななかで、日本の商業施設のプレゼンスも問われている。香港系のデベロッパーが中心となって開発する超豪華版モールに対して、日系商業施設は資金不足を露呈し、その存在はかすんでしまう。南京路の東の端で伊勢丹が日本の東急ハンズやFrancfrancをテナントに据え、若者目線、生活者目線での「新しい価値」の訴求を試みるも、消費者を振り向かせるのは難しいようだ。
上海にこれだけ林立する豪華版ブランドモールだが、残念ながらそれは、鉄とコンクリートのハコモノ開発の域を出るものではない。上海市の一人当たりGDPはすでに1万ドルを超え「先進都市入り」したとはいえ、「利用者の利便性」は一向に向上しない。昨今の地価高騰、“特権階級向けマーチャンダイジング”は、上海市民を本当の意味での「買い物の楽しみ」から遠ざけているのが実情である。