同様なことは送電料金だけでなく、1998年から2000年までの間には小売料金に対しても行われ、手元で計算した限りでは、1995年から2000年までの間に、これらの規制強化により電気料金は20%程度引き下げられたことになる。

 これは、送配電会社が民営化を契機に合理化を進めた(それ故に儲け過ぎが顕在化した)結果という意味では民営化の成果と言えるかもしれないが、競争や自由化の成果とは言えない。したがって、この時期の英国を自由化の好事例と評価している1/11論考の主張には私は賛同できない。

ドイツの料金低下は電力会社の不慣れのため
実質的に自由化の効果はマイナス

 第三にドイツ。1/11論考では、ここも自由化が開始されて以降を3つの時期に区切って論じているが(図5)、自由化直後の1999年から2000年にかけて電気料金が急速に下がった時期を好事例と評価している(第1期)。しかし、わずか1~2年で終わってしまったものを好事例と言えるだろうか。

 ドイツの動向に詳しい筋によると、この時期に電気料金が急に低下したのは、ドイツの電力会社が自由化に慣れていなかったため、採算度外視した料金引下げを行ったからなのだが、それでは事業が持続できないことに直ちに気付いたので電気料金の下降期間は短命に終わったとのことだ。であれば、やはりこれを好事例と評するのは不相応だ。

◆図5:海外での電力自由化による家庭用料金変遷(ドイツ、ATカーニー分析)……「1/11論考」より抜粋

 その後、ドイツの電気料金は一本調子で上昇傾向にある。1/11論考は、その主な要因を再生可能エネルギーの拡大による賦課金の増加や炭素税等の拡大としている。それは間違いではないだろう。だが、それらの影響を除いた残差が上昇していることも図5から確認される。

 加えて注意すべきは、政策補助を受けた再エネが拡大し、卸電力市場に大量に流入してくれば、それだけで電気の需給が緩んで卸電力価格、ひいては残差を押し下げる効果があるということだ。そして、この料金(残差)引下げ効果は、再エネの優遇政策によるものであって自由化が成功したわけではない。

 つまり、図5に示すドイツにおける残差の傾向は、最初から自由化と無関係な卸電力価格に対する引下げ圧力を織り込んでいる。1/11論考では、残差が自由化前の水準に戻っているとしているが、見掛けの数字が同水準であるならば、実質的に自由化の効果はマイナスと評価すべきである。