50年後、個人が生み出す経済の規模は中国の9分の1に
漆 私の場合、30年後を思い描いています。日本のように資源の少ない国では、国の力は個人の発信力と人口の掛け算になるので、問題点として一番大きいのは少子化ですよね。50年後に日本のGDPは中国の9分の1、インドの6分の1になるというOECDの未来予測も出ています。今はまだ世界第3位の経済大国。でも、人口減少社会の中では、一人ひとりの子どもたちに今以上に力をつけてもらわないと、世界で生き残っていけないんですよね。
松田 でも30年後を見据えて、ってなかなかできることじゃないですよね。
漆 そんな先まで考えて、子どもに関わる人は少ないでしょうね。どういった観点で学校選びをするのかというと、まだまだ入学時の偏差値や大学への進学実績といった数字で選んでいる方が多いと感じます。
でも、数字は過去の実績を表すもので、未来は変化します。長い人生を考えたときに、30年後に価値があるものは何なのか…という考え方が大切でだと思います。さらに世界を見ると必要とされる人材が変わってきているのに、日本の教育現場の変化が追いついていない焦りはありますね。
松田 確かに、そのもどかしさは非常にわかります。
漆 昨年、サウジアラビアに行ってすごくショックを受けたんです。公的視察ということもあり、プロバガンダの可能性を少しは差し引いて考えないといけないのですが、世界最大の女子大を見学しました。現在、女性の地位や活用率が高くないと言われる国なのに、そこでは女性に最新のエリート教育をしているんです。
80年後、自国の資源であるオイルがなくなったときに、次に力になるのは人材だ、と考えていて、だから戦略的に教育に力を入れているんだそうです。
それは国家予算に対する教育費の割合にも表れています。日本は5%に満たない数字ですが、サウジアラビアは25%。つまり4分の1を教育と職業訓練費に投資しています。教育費は幼稚園から大学院まで無料で、留学するときにも学費や渡航費、滞在費はもちろん、女性の場合は、一緒に行く家族の費用まで支給されるそうです。
松田 それはすごい。
漆 本校の生徒たちに、「あなたたちは、そういう人と仕事をしていくことになる。隣の人との違いをあげている場合ではない」と話しました。人間が減るのは見えている時代だから、そうなったときにどうしたらいいのか、を考えていかないといけないと思っています。