工藤 本当にもったいない。もっと発展させたいと思っています。僕たち民間が責任持って東アジアの将来について考えていかないといけない。当事者意識をもって対話し、世論を作っていく。それで、課題解決に取り組む。決して政府外交を補完する存在が民間外交ではないと思う。そうすれば、政府外交も変わってくるんじゃないか。

 このフォーラム、実は2014年の10回目で終わる予定で始まったんだけど、今回、中国の主催者側から、「10回以降のことも検討してくれないか」って言われましたよ。

 僕らはいまは『民間外交』って呼んでいるけど、民間が主体となって対話をして課題を解決する外交を『言論外交』って呼んだからどうかって思っているんだけど、通じるかな。この間、アメリカの外交問題評議会(CFR)にこれを言ったら、理解できないって言われちゃって。

加藤 少なくとも中国では通じますよ。違和感ないですね。中国語でも『言論外交』で、ニュアンスも解釈も日本語と同じ。誤解も受けないと思いますよ。

対話によって課題を解決する
「言論外交」を確立したい

加藤 僕は修士論文を『ネットナショナリズムが対日外交に与える影響』をテーマに書いたんですよ。中国で世論が台頭してきたこと自体はポジティブな現象だと思いますが、それは同時に政策決定プロセスを複雑にしていくことでもある。内政・外交を含めて、世論が政策を“キッドナップ”している局面が増えています。

 反日デモなどをメディア報道すると、ネット世論が影響され、それがナショナリズムを煽ることになる。ナショナリズムが政府のガバナンスを不安定化させることにつながっている。そうなると、政治家はますますネット世論に恐れを抱くようになる。

 実際に、論文を書くときに外交部や公安部などの役人に、「ネット世論に脅威を感じるか」と聞いたら、全員が脅威を感じるって答えた。みんな、世論が怖くて、世論を前に浮き足立っている。“世論と政策”という文脈においては、中国は新しい局面に直面している。

 しかし、『言論外交』の核心は、世論を政策の邪魔者として扱うんじゃなくて、世論を課題解決のツール・味方にするという逆利用にあるのでしょう。世論を課題解決のドライビングフォースにしようという逆転思考。もちろん、中国でこれができてしまうと、僕の書いた論文は全く意味がなくなってしまいますが(笑)。