さらに、原子力規制委員会が発表した安全対策に要する1兆円規模のコストを勘案すると、原子力発電のコストは約10円/kWh程度となる。

 片や、天然ガス火力については天然ガスの調達改革、シェールガス、自由化による競争、等により発電コストが低下するので、原子力発電の経済的な優位性はなくなっている。

 つまり、原子力発電が停止したことにより3兆円余の国富が海外に流出していると言うのであれば、同じくらいの規模で、原子力発電の安全対策や賠償などのために国家財政や電力会社の財務が毀損されていることになる。

原発の燃料調達には強みがある
選択肢として将来世代に残すべき

 一方で、燃料調達のリスク低減という意味では原子力発電には強みがある。

 燃料の枯渇リスクについては、ウランは可採年数が100年以上とされるが、天然ガスの可採年数もシェールガスの商用化で100年以上になったとされるので原子力発電に優位性はない。しかし、発電用ウランの調達が超長期であること、調達してから使い終わるまでの燃料の滞留時間が長いこと、発電コストに占める燃料コストの比率が低いことなどから、燃料価格変動のリスクは顕在化しにくいと考えられる。

 発電時に二酸化炭素を発生しないので環境政策の影響を受けるリスクも少ない。加えて、実現に苦しんではいるものの、原子力発電には核燃料サイクルという他の発電手段にはない可能性がある。

 原子力発電の是非に関する論点として、使用済み核燃料の処理問題が指摘されるが、将来世代への技術の継承という本論の趣旨から言えば、核燃料サイクルも将来世代に継承すべき技術の一つである。

 以上から、原子力発電をエネルギー政策に位置づけることはエネルギーポートフォリオを強化する意味がある。原子力発電は、ひとたび事故を起した場合の被害が途方もなく大きいが、リスクについては技術の進化により低減でき、エネルギー供給を支えるための高いポテンシャルを秘めていることも確かだ。その選択肢を断ってしまうことは将来世代に対して責任ある政策判断とは言えない。