先生 経太君くん、いかんよ、そういう読み方は。
「ちゃんと正しく日本語の単位を入れて読みなさい」と言いたいところだが、君たちがまだ慣れていないということで、次の表を用意しておいた。
これならどうだ。まず、売上高と営業利益の数字を見てごらん。
経太 えーと、売上高は2兆9,970億円から3兆0,198億円ですね。
ああそうか、両方ともほぼ3兆円というところです。
次に営業利益は、ええと……157億円の赤字から2,423億円の利益。
あれっ、ちょっと待って下さい。
平成13年度の営業利益は2,423億円です! すごい!
有価 私もびっくりしました。2,423億円というと、ものすごい利益ですね。
売上げが変わらないのに、利益はまるで別の会社みたいです。
平成11年度は157億円の赤字だから、改善幅はほぼ2,600億円です。
先生 どうだい。これでわかっただろう。数字を棒読みしただけでは、そこにおどろきも感動も生まれない。
数字の真の意味が見えてこないからだ。君たちにはこの数字を見て、腰を抜かすほどびっくりしてほしい。ゴーンさんはいったいどんな魔法を使ったのだろう。
なぜだろう、という感動があれば、その秘密を探ろうとして経費の詳細を見たり、損益分岐点を計算しようとする好奇心が芽生えるはずだ。
有価 先生、なぜ決算書は先生の表のように億円単位で書いてくれないのですか。
先生 それは、日本語の位取りが4桁ずつ、つまり
であるのに対して、西洋式の位取りは3桁ずつ、つまり
のようになっているからだ。Million は100万、Billion は10億、Trillion になってやっと、1兆と重なる。
表記上は国際基準で記述するのはやむを得ないかもしれないが、32,842百万円などと言っても、万、億、兆で表示しなければ我々にはピンとこない。
経太 へえ、まいったな。僕たちは決算数字を見るとき、少々ハンデを負っているんですね。
先生 なに、たいしたハンデではない。これを克服するには決算書を読むときに、億・兆単位でタテに線を引いておくか、別のサブノートをつくる方法をすすめるよ。