ローテクは、役に立たないのか?
――「テクノロジーのスペック」×「創造性」という新しい捉え方

中村 先ほどの写真のソーラーライトは、スタンフォード大学の卒業生が立ち上げたベンチャー企業「d.light(ディーライト)」がつくったものです。彼らのようなベンチャー企業や大学、はては個人の発明家が入り乱れて、こうしたシンプルな製品が今や世界中で次々と生まれています

(左)重力を利用して水をろ過する製品(右)水の運搬の負担を軽減する「Qドラム」

――日本ではまったく見たことのない製品ばかりですね。しかもどちらかというと、「ローテク」にも見えます。

中村 日本の製品はスペックが高くて高性能なのですが、そのせいで複雑すぎて結果的に価格が高くなる、というジレンマがあります。

しかし途上国では、価格は極力安くするべきです。このように言うと、「では途上国でつくられた安かろう・悪かろうの製品しか当てはまらない」「『安さ』で中国やインドと勝負するのは難しいよ」と答える人が多いのですが、そう単純な話ではありません。

創造性とスペックの2軸で考える(図版:うちきばがんた)
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この図を見てください。「高価なハイスペック製品」と「安価なロースペック製品」という2極ではなく、テクノロジーのスペックと、創造性の2軸で4つのセグメントに分類してみるとイメージが湧きやすいでしょう。

――つまり、安くて創造性の高い製品、というセグメントがある、と。

中村 そうなんです。「クリエイティブなローテク」とでもいいましょうか。僕は、ここから生まれる製品が途上国の問題を解決する製品だと考えています。実際、先ほどのソーラーライトをはじめ、多くの途上国向けの製品を見てみると、制約条件の多いなかでも使えるモノづくりがなされていて、そこにはアイデアがたくさん詰まっています。「安かろう」というのは、必ずしも「悪かろう」ではない。安くて、かつ創造性にあふれた製品が途上国にマッチしているということなんです

こうした製品が、僕が国連で働いているときに接した途上国の貧困層の人たちに届けば、世界はもっとよくなるんじゃないか――そう思って、僕がもう1人の創業者、エヴァ・ヴォイコフスカとともに立ち上げたのがコペルニク、というわけです。

次回は、ソーラーライトのようなシンプルな製品を必要としている貧困層が抱える課題、すなわち巨大なBOP市場――24.7億人ものニーズが漂う「ブルー・オーシャン」――に眠る根源的なニーズについて、話を伺います。途上国市場が抱える6つの課題とは? お楽しみに!(3月20日公開予定)

 


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