「ローテク」とITの掛け算が生み出すイノベーション
――コペルニクの「しくみ」とは?
――いまさらですが、そのしくみについて簡単に説明していただけますか?
中村 コペルニクのミッションは、テクノロジー製造者、途上国の現地団体、寄付者の3者をオンラインでつなぐことで、貧困層の人々の日々の生活の課題を直接的に解決するテクノロジーを、より多く、持続的に普及させる仕組みをつくることです。
具体的に説明しましょう。ウェブサイト上で、エネルギー、水・衛生、農業、教育、保健、情報通信の6つの分野に分けて、途上国向けのシンプルな製品を紹介しています。この「カタログ」から、途上国で活動している団体が、現地で最も必要なテクノロジーを選びます。
ここで大事なのが、これまでの連載でも述べた「現地のニーズ」をよくわかっている団体が、ニーズとソリューションをマッチさせるということ。コペルニクが押し付けるのではなく、ボトムアップでニーズとマッチさせるんです。
そして、このテクノロジーがいくつ必要か、どのように普及させるのかを、現地団体に提案書で説明してもらいます。たとえば、「東ティモールのアタウロ島の3つの村に対して、ソーラーライトを、250個普及させる。1つ当たり12.5ドルで販売する」という内容が提案書に書かれます。
この提案書を、コペルニクのウェブサイト上にアップし、クラウド・ファンディングのアプローチで、個人から小規模の寄付を集めます。寄付者はどのプロジェクトに寄付するかを選べるようになっています。また、寄付は製品1個という形でも可能です。
コペルニクは、この寄付で集まった資金で、企業などから必要なテクノロジーを購入し、現地の団体まで届けます。そして、テクノロジーを受け取った現地の団体は、実際にテクノロジーを使用する家庭・人々にまで届けているんです。
――無料で配るんですか?
無料で配布することはしません。ただ、価格の設定は柔軟で、集めた寄付を使って価格を下げたり、分割払いをしてもらったりするなど、最貧困層の人々が無理なく買える価格を、現地パートナーとともに決定します。
というのも、無料で配ると、必要でないという人にも届いてしまう可能性があり、せっかくの製品が有効利用されない恐れがあるからです。また、あげる者ともらう者という依存関係ができてしまう恐れもあります。だから最終的に貧困層の人々が自立した生活を送る手助けをするためには、対価を支払ってもらうことが大事だと考えています。
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このように、コペルニクは、テクノロジー会社、現地の団体、そして、寄付者の3者をつなげることによって、貧困層にテクノロジーを届け、貧困削減のお手伝いをしています。
――ハイブリッド・バリュー・チェーンをつくることで、コペルニクはテクノロジーを普及させているんですね。
中村 コペルニクは、テクノロジーを開発した企業とNPOの関係の仲介をしているといえます。主にベンチャー企業が開発した途上国向けのテクノロジーを、途上国の市民団体・NPOとパートナーシップを結ぶことにより、第1回の記事で紹介した電気などのインフラがない途上国の貧しい村々への普及を可能にしています。