MITやスタンフォードがNPOと手を組むワケ
――事例3 NPOと手を結ぶ大学や政府

――他に注目しているような「連携の仕方」はありますか?

中村大学、そして政府がイノベーションを起こすために積極的に異なるプレイヤーと手を組んでいることが挙げられます。特に大学では、近年、途上国向けのテクノロジー開発を教えるところが増えています。

 日本でもよく知られるようになったMITのD-Lab(ディーラボ)スタンフォード大学の”Design for Extreme Aff ordability”だけでなく、ライス大学の”Beyond Traditional Boarders”(伝統的な国境を越えて)、オランダのデルフト大学、インドネシアのボゴール農業大学など、先進国・途上国両方でこの動きは加速しています。

 このような大学が、途上国の「現場」でのネットワークの重要さを認識し、NPOとパートナーシップを組みはじめているんです。

――コペルニクとも、何かプロジェクトをやっているのでしょうか?

なぜ日本企業は<br />途上国でイノベーションを起こせないのか?コペルニクのオフィスを訪問し、
調理用コンロの比較テストを観察
するダン・フレイMIT教授(左上)

中村 たとえば、MITのD-Labは、コペルニクが持つ途上国のネットワーク、そして数多く実施しているプロジェクトからのフィードバック収集能力を評価し、コペルニクと正式に協力体制を結ぶパートナーシップを提携しています。

 2013年の夏には、MITの教授と学生をコペルニクに受け入れ、僕らがさまざまな場所に届けている浄水器を、材料、デザイン、ユーザー満足度などから多角的に評価してもらっています。

 さらに注目すべきことは、こうした大学とNPOのパートナーシップを、政府機関であるアメリカ合衆国国際開発庁(USAID)が支援しているということ。政府がイノベーションを支援することは珍しくなくなってきました

――政府、大学、NPO、企業。そして、途上国で暮らす人たちに、先進国で暮らす人たち。すべてが、つながっているのですね。

中村 ええ、つながることで、イノベーションはさらに加速し、貧困層の人たちにより多くの「選択肢」を持ってもらうことができるのです。