さまざまな作用が注目されているニンニク。先日、コペンハーゲン大学からニンニク成分の「アホエン」が、抗菌薬の殺菌作用を助けるのでは、という研究結果が報告された。
アホエンとはスペイン語でニンニクを意味する“Ajo(アホ)”に由来する名称。いまひとつ頼りなさそうだが、これまで抗酸化作用、抗血栓・抗凝固作用(いわゆる血液サラサラ作用)、抗腫瘍作用などが確認されている。今回の研究は、そのうちの抗菌作用を確認したもの。
研究者らは、抗菌薬に対する抵抗性を獲得した緑膿菌に感染し、呼吸器感染症を発症したマウスに抗菌薬とアホエンを投与した。その結果、抗菌薬とアホエンを併用したマウスでは、抗菌薬だけを投与したマウスと比べ、有意に緑膿菌を殺すことが確認された。研究者は「アホエンは緑膿菌の毒素分泌を妨げる一方、バイオフィルムと呼ばれる菌のコロニーを破壊し、抗菌薬が緑膿菌に到達するのを助けた」としている。
緑膿菌は自然環境や人体のどこにでもいる常在菌だ。栄養分がたっぷりあり、温度も湿度も快適な条件下では活発に増殖する。健康な人にとっては脅威でも何でもないが、抵抗力が弱っている病後や高齢者、乳幼児は警戒すべき菌だ。血管内に菌が侵入すると全身性の炎症を起こし、時には致死的となる。在宅介護が増えている現在、家庭でも注意が必要だ。
抗菌薬に抵抗する「薬剤耐性菌」への対応が課題でもある。手軽に使えるニンニクで耐性菌を殺せるなら願ったりなのだ。ただし、「今回の結果はマウスが対象。人間で薬理効果を発揮するには少なくともニンニク50個分のアホエンが必要」なのだとか。有効成分を合成するすべが見つかるまでは、薬というより健康食品として考えたほうがよさそうだ。
ちなみに、アホエンは脂溶性の成分。家で抽出するにはニンニクをどっさりすりつぶし、2~3日、オリーブオイルなどの食用油に漬け込んでおくといい。保存容器を事前に煮沸消毒しておくと安心。ラーメンにニンニクごと垂らしても美味い。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)