採用面接で価値観を知るために、何を聞くべきなのか?
――脳波を含めたさまざまなデータや行動観察から、人の価値観を知ろうという共通点がある一方で、価値観を知るというのは、そう簡単なことではないようにも思います。例えば、採用面接のとき、受検者の価値観を知ることは企業が苦労している点です。
松波 そうですね。もし採用担当ならば、面接でこのように聞くこともできるでしょう。「あなたは就職して仕事を始めました。あなたの担当しているAとBの2つの仕事の締め切りはまったく同じ日です。あなたの責任ではないけれども、両方の仕事を同じ締切日までに終わらせることができないことが判明したとします。そのとき、AとBのどちらの仕事を優先するか、あなたはどういうふうに決めますか?」
「自分にとっておもしろい仕事かどうかで決めます」「利益が高いのはどちらか、で決めます」「お客さまへの影響が大きいほうに決めます」といったように、この質問への回答には、その人の価値観が強く反映されるでしょう。そういう質問の仕方も、価値観を知るためにはよいと思います。
谷井 私が採用について意識している点は3つあります。1つ目は、スキル。自動車で言うと、運転の仕方です。2つ目は、ナレッジ。これは知識のことですから、交通マナーの教本など、何かを読めば身につくものだと思います。3つ目はマインド、つまり心の持ち方です。運転時の心がまえといえるものです。
実は、スキルとナレッジは後から身につけることもできますが、マインドはそうもいきません。無事故、無違反のゴールド免許を持っているかどうかは、運転能力よりもマインドに影響するものですよね。
このマインドをさらに分解してみてみると、まず、生い立ちから幼少期に持つ原始的な価値観があります。その上に、大学を出る頃までの友人関係でつくられるものがある。さらに、社会に出てからの金銭的な関係。大きくはこうした三層で築かれると捉えています。
私が一番重要だと思っているのは、心のより内側に近い、原始的な価値観です。極端かもしれませんが、法を犯していいと思っている人と、そうではない人とは同じ判断ができません。そのため、採用ではここを重視しています。そうすれば、一緒に働いていけるかどうかがわかります。最終面接は私が必ず行うのも、このためです。
松波 なるほど、マインドが重要だということですね。
人の価値観を探るのは難しい。それを捉えて、さらに発想を生むためにはどうすればよいのか。谷井氏、松波氏の仕事の原点にさかのぼると、マーケティングだけでなく、ビジネスを成功させる秘訣までが浮かびあがってくる。後編は、5月7日(水)を予定。
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