マルチサイドに収益確保を狙うLINE、
ユーザー利用料一本に特化したWhatsApp
LINEの売上は、主に3つの収益源から成る。ひとつめは、総売上げの6割を占めるゲームである。LINEゲームはこれまでに54タイトルをリリース、ゲームを有利に進めるためのアイテム課金による収入を得ている。
ふたつめは、スタンプ(メッセージに添えるイラスト画像)への課金である。無料のスタンプでは飽き足らないユーザーが、ディズニーやサンリオなどの有料スタンプを購入するのである。有料スタンプによる売上は月間10億円を超え、売上の2割を占めると言う。
上記2系統はユーザーを顧客とした売上だが、3つ目は企業を顧客とした売上となる。LINEは、その顧客基盤を企業のマーケティングプラットフォームとして活用することで、企業とタイアップしたスポンサードスタンプや、企業の公式アカウントから収益を得ている。
スポンサードスタンプは、数ヵ月先までの広告枠が既に埋まっているほど需要があると言う。また有料で一定数の販促用メッセージを配信する、企業向けの公式アカウントは、2013年10~12月期の売り上げが122億円と、前年同期の5倍以上に拡大した。
さらに2月には、この公式アカウントの拡大版として、企業とユーザーがダイレクトに繋がる場を提供する、LINEビジネスコネクトも発表した。
このようにLINEの利益モデルは、無料の通話・コミュニケーションを提供することで獲得したユーザー基盤をベースに、ユーザーと企業のマルチサイドから収益を得るモデルである。
ユーザーには、コミュニケーション機能そのものではなく、スタンプやゲームといった付加価値として提供するエンタテインメントコンテンツに対して課金している。一方、企業には、マーケティングプラットフォームとしての利用に対して課金をしているのである。
これに対して、WhatsAppはサービス開始当初からアンチ広告を謳い、企業からの収入を一切排除している。ユーザー間のコミュニケーションいう基本機能に対して、使用するユーザーへ課金をしているのである。
1年目は無料であるが、2年目から年間0.99ドルの利用料が発生する。メッセージングアプリは一日に何度も使うため、ユーザーの依存度も高く、本質的に顧客を継続させる力がある。
携帯電話でのメールがまだ主流だった数年前を思い出してほしい。通信キャリアの流動性を促進するナンバーポータビリティが導入された時のことである。この時、携帯メールがあったおかげで、ユーザーがアドレスをそのまま使いたいため、そのキャリアに留まるという作用を生んだ。
メッセージングアプリも同様に、利用者にとって、日々のコミュニケーション手段となれば、ずっと使い続けようとする力が働くであろう。WhatsAppの利用料課金は、コミュニケーションプラットフォームが持つ顧客継続性を活用した、持続的に売上をもたらす利益モデルであると言える。