利益モデルの違いを見れば、
ふたつのビジネスモデルの違いがわかる

 このように利益モデルを比較すると、LINEとWhatsAppのビジネスモデルの違いが明らかになる。

 LINEはメッセージングアプリという範疇を超えて、生活者プラットフォーム型のビジネス、つまり多様な主体を繋げて価値を生むビジネスを志向していると言える。メッセージ以外にもEコマースのLINE MALL といった交流の場を提供するなど、生活者のインフラとなろうとする戦略が見える。

 プラットフォームを梃子に、前述の収益源以外にも様々なコンテンツ、例えばスタンプ人気キャラクターのグッズ販売や、音楽配信サービス(サービス開始は今後)による収益源の多様化を試みている。

 一方、WhatsAppは、メッセージングアプリとして、ユーザー間のコミュニケーション機能提供に特化したビジネスである。収益源もユーザーからの利用料に絞ったシンプルなものである。同社は売上を公表していないが、仮に年間0.99ドルを4.5億人が支払ったとして、約450億円の売上と推定できる(実際の登録ユーザー数はもっと多い)。

 WhatsAppはシンプルな利益モデルに特化する分、正社員55人というスリムな組織でこのビジネスを運営している。社員一人当たりの売上で見ると、極めて効率の高いビジネスと言えるのではないか。

 LINEは2013年度518億円の売上げがあり、ユーザー規模から考えてもその売上げはWhatsAppを大きく超えるものである。しかし、生活者プラットフォームとしての様々なサービスと多様な収益源を保有している分、事業運営に必要な経営資源は多くなり、正社員666人を抱えた大きな組織となっている。

 WhatsAppとLINEは、両社とも同業で急成長を続ける、スマートフォン時代の寵児である。しかし利益モデルの違いを見ると、両社のビジネスコンセプト、そして両社が展望するビジネスの未来は、大きく異なるものである。数年後の両社は、同業の競合とは言えないかもしれない。

参考資料
「10 ways that free messaging apps monetize」 Mobile, Messaging and Marketing 2013/9/12
「ユーザー数世界3億人を突破!LINEのコンセプトの全てを語ろう」ダイヤモンドオンライン IT insight 2013/12/2
「WhatsApp $19B Secret Formula」 Fobes Entrepreneurs 2014/2/21
「How messaging apps can monetize their platforms」Mobile Commerce Daily 2014/03/20
「LINE全解明」週刊ダイヤモンド2014/4/19号

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