■ドラッカー博士の助言が「心の支え」に

 韓国での仕事を通して私は、業務プロセスを可視化することの必要性をますます痛感することとなる。モノづくりの現場がカイゼンを重ねて世界に誇れるレベルにまで進歩を遂げている一方で、ホワイトカラーの進歩は停滞したままだ。真の経営革新を成し遂げるには、モノづくり部門だけの革新では足らない。ホワイトカラーの革新が、これからの企業の命運を握っているのではないか。

 そもそもホワイトカラーはどういう職種なのか。

管理・間接業務を指すが、管理者が行なうマネジメント業務および
情報を処理する事務作業全般にわたる。

 残念ながら、ホワイトカラー業務の改善を支援する実践的なツールが世の中にはない。そうしたツールが今後、必ず求められるようになるはずだ。そう確信した私は、以来、四半世紀以上にわたってこの道一筋に挑戦を続けてきた。

 その思いを強力に後押ししてくれた出来事がある。「マネジメントの父」と称されたピーター・F・ドラッカー博士との出会いだ。

 1994年、ドラッカー博士の教えを指導するドラッカー塾が開催されていたが、業務改善の分野には適切な指導者がいなかった。そこで私が「業務改善の実践手法」を提案する機会があり、その必要性が認められ、講師として招かれることになる。上場企業の部課長31名の受講者に対して3ヵ月に及ぶ講座を実施したのだ。

 その頃、来日したドラッカー博士と一度だけ対面する機会があった。博士は私の提案した「業務改善の実践手法」に深い理解を示し、「これは大変いい手法だ。日本企業に合っている。とにかく早く開発を進めるように」との激励の言葉をくれた。そして講座の修了者一人ひとりに自筆でサインした修了証を出していただいた。

 特にドラッカー博士が関心を寄せたのは、分解した一つ一つのデスクワークについて、基準となる作業時間を決める際、本人による自己申告制を取り入れ、単位作業のチャンピオン時間を設定した部分だ。