東北を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災の発生から3年。遅々として進まない復興や風化を危惧する声も出ているなか、被災地に対して特別な思いを抱いている二人がいます。「ハゲタカ」シリーズ著者であり、被災地の小学校を舞台にした小説『そして、星の輝く夜がくる』(講談社)を刊行したばかりの作家・真山仁さんと、被災地で一から高級イチゴビジネスを成功させ、その奮闘を記した著書『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)を出版した岩佐大輝さんです。自身も阪神・淡路大震災で被災し震災後の東北を精力的に取材する真山さんと、IT社長として東京で成功しながら故郷で農業という未経験のビジネスに取り組んだ岩佐さんは、被災地で実感した課題をどのように未来に伝えていこうとしているのか。クリエイターと読者をつなぐサイト「cakes」とのコラボ企画である白熱対談全3回、いよいよ最終回です。(構成:宮崎智之)

怖さや弱さを隠させてはいけない

真山 私が『そして、星の輝く夜がくる』を書こうと思ったきっかけの一つに、震災直後からテレビや新聞などメディアが、やたらと子どもを撮り始めたということがありました。みんな元気でニコニコして、すごくたくましい。するとコメンテーターが「子どもは強いですね」と必ず言うんです。これはまずいことになりそうだと思いました。

岩佐 ああ、僕にも同じような経験があります。震災直後に中学生のキャリア教育に取り組んだとき、全員が全員、「自衛隊になりたい」「消防士になりたい」と言ったんです。自衛隊や消防士に助けてもらっているわけですから、感謝したり憧れたりするのは当然かもしれません。しかし、世界は広いわけです。いろんな選択肢がある。震災が子どもを狭い世界に閉じ込めてしまったのかもしれないと思いました。

真山 強い大人が周りに自衛隊や消防士しかいなかったからでしょう。被災地で子どもが元気にふるまったり、大人がのぞむような答えを言うのは、大人に立ち直ってもらいたいというメッセージなんですよね。大人が弱ってしまうと子どもは生きていけないので、本能的にそういう行動をする。

岩佐 小説のなかに出てくる小野寺先生は、児童に「頑張るな」と言っていますね。

真山 結局、神戸はそれができなかったんですよ。震災の翌年から子どもにPTSDの症状が出始めて問題になりました。
 そうそう、被災した人間って大きな音がダメなんです。作中でもボランティアが打ち上げた花火でもめるシーンがありましたが、特に子どもは大きな音をとても怖がるものです。でも、ちゃんと怖がっている人は意外と大丈夫で、怖さを我慢してしまうほうが、後になって深刻な事態になることがある。

岩佐 小野寺先生は部外者だからこそ、子どもの「我慢」を見抜けたんですね。