5月28日に行なわれるアデランスホールディングスの定期株主総会を前に、同社と、筆頭株主のスティール・パートナーズ・ジャパンによる委任状争奪戦が繰り広げられてきた。

 経緯を整理しておけば、スティールが提出した株主提案書に対し、アデランス側は投資ファンドのユニゾン・キャピタルとの資本提携で対抗。ユニゾン出身の3人を含む新経営陣の選任案を打ち出し、これが株主総会で認められれば、ユニゾンが1株=1000円で株式の公開買い付け(TOB)を実施する計画だ。

 これに対してスティールは、「TOB価格の1000円が1株当たり純資産(1500円)を下回り、既存株主に損害を与える。スキームが株主に強圧的」と反発。スティールの働きかけで、議決権行使助言会社大手の米グラス・ルイスが早々にスティール支持の立場を発表している。

 アデランスの外国人持ち株比率は51.1%。アデランス・ユニゾン連合が確保しているのは創業者の根本信男氏が保有する9.2%のみ。アデランスにとっては個人株主(11.6%)や金融機関(12.6%)の票を確実に固められるかが課題だ。

 現時点では膠着状態が続いているが、今回は「スティールに分が悪い」という見方が優勢だ。スティールから社外取締役を送り込まれたにもかかわらず、2009年2月期は、最終利益で21億7200万円の赤字となった。スティール側は「社外取締役はあくまで経営を監督する立場」(幹部)と言うが、一部の株主からはスティールの責任を追及する声も上がっている。

 TOB価格の引き上げを引き出したいスティールに対して、ユニゾンは応じる気がまったくない。今年3月までアデランスの株価は600円台だったことを考えれば、1000円というTOB価格が低過ぎると考えていない株主も少なからずいる。アデランス株主総会を前にスティールの焦りが目立っている。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  大坪稚子)