子供をダメにする親子の距離感とは
髙橋 そうは言っても、お母さん方の意識を変えるのも、なかなか大変ではないでしょうか。
柳沢 子育てには、“求められている”という充実感がありますからね。子育てが終わった母親たちに聞くと、「あの時期が一番充実していました」と言う人が多い。気持ちはわかるけれど、そこをうまく断ち切って、旦那さんのお世話をしてあげて欲しいと(笑)。
昔は平均寿命も短かったから、子育てが終わる頃には人生の終焉を迎えていたけれど、今は子育てが終わった後、もう1回分くらいの人生がある。そこをどうハッピーに過ごすかを考えると、夫婦のあり方を見直して、うまく関係性を作っていくことが大事じゃないかと思うんです。
そのためには、「子供がすべて」と考えるのではなく、「子どもは夫婦の闖入者」というイメージを持っておく。すると、子育てが終わったあとも、夫婦がハッピーでいられるような気がしますね。
髙橋 先生がお書きになった『ほめ力』を読んでいて、世のお母さん方は、子供だけでなく、夫もこうして褒めて育てたらうまくいくんじゃないかと感じました。例えば、電球ひとつ換えるにしても、「ありがとう! あなたがいなければこの世は真っ暗よ」なんて言われたら、私なんかは喜んでやっちゃいますね。基本的に単純ですから、我々は。
柳沢 人間誰しも褒められたらやる気が出るし、伸びていきますからね。それは夫婦でも、子供でも、会社の部下でも同じ。いくつになっても褒められるのは単純に嬉しいものです。
ただ、褒めるのは、実は難しい。上手に褒めるためには、褒める側に明確な価値観がなきゃいけない。“私はこれが望ましいと思っている”という価値観がないと、思いが伝わらない。だから、みんな褒めるのが下手なんです。
髙橋 上手な褒め方ってありますか?
柳沢 漠然と「いいね」と褒めるのではなく、具体的に「この項目がこんなふうに良かった」と伝えることです。叱ってばかりでは、“やっちゃいけない”というメッセージしか伝わらないので、“それならやらないほうがいい”と指示待ち族を作ってしまうんです。