100歳を超えてなお現役の
医師による生きる知恵

日野原重明著『100歳の金言』2012年2月刊。帯には仏様のような著者の写真が。お優しそうな印象を与えます。

 本書『100歳の金言』著者の日野原重明さんは1911年生まれ。明治・大正・昭和・平成の4つの時代を生き抜いてきました。今年10月に誕生日を迎えると103歳になります。100歳以上の高齢者人口5万4000余人のうちの1人ということになりますが、日野原さんが他の100歳以上の高齢者と若干異なるところは100歳を過ぎてもなお”現役”を続けていることです。

 110歳までの予定を書き込める手帳を片手に、現役医師として飛びまわっています。長い人生の間、さまざまな試練を乗り越えてきましたが、今思い返せば、あっという間の100年だったと感じています。……この本には、100年という長い人生で、75年間臨床医として歩んできた私からあなたへ、ぜひお伝えしたい50の言葉を書き残しました。(2~3ページ)

 1世紀以上にわたって時代を見つめ、艱難辛苦を乗り越えてきた人物の存在感や魅力はいかほどのものなのか。残念ながら、筆者は日野原さんへのインタビュー経験はありませんが、そばにいるだけできっと伝わってくるものがあるのでしょうね。周囲を包み込むような言葉遣いや立ち居振る舞いが目に浮かぶようです。本書に出てくる「50の言葉」のうち、多くの読者は「長寿の鍵”カロリー”」「30歳の体型を保つ」「若さの秘訣は『創める』」といった、健康で長生きするための知恵や工夫に、真っ先に関心を寄せるのではないでしょうか。

 私の1日の摂取カロリーは約1300キロカロリーです。65歳で腹八分目の減食をし始め、現在は腹六分目を心がけた食生活を続けています。
食事の内容は、朝は、オリーブオイルを大さじ一杯(15cc)入れた果物ジュースと、牛乳に大豆レシチンを茶さじ3杯入れたものを飲みます。昼は、牛乳(180cc)とクッキー2枚。夜は、カロリーが少なくビタミンが豊富な野菜をたっぷりと魚を毎日食べます。糖分の多いご飯は茶碗半分程度と少なめに。週に3回は、細胞を作るたんぱく源をとるため、脂肪分の少ない牛のヒレ肉を食べています。オリーブオイルなどの植物油や魚の油は、動脈硬化の予防になるといわれていますので、私は積極的にとるようにしています。

 摂取エネルギーを控えると寿命が長くなることは、アメリカのハーバード大学でのマウスやアカゲザルを使った実験により科学的にも証明されています。(84~85ページ)