高度成長期は深刻な住宅不足の問題があり、「とにかく屋根のあるところに」という時代だった。しかし現在は需要と供給の状況が逆転しており、民間賃貸住宅の空き家率が10%以上となっている。また、昭和38年に決められた「級地」区分による住を含めた生活コスト算定は、現在、妥当ではなくなっている可能性もある。園田氏は、実態とともに「適正な住宅水準が確保されているかどうか」を、エビデンスに即して議論できるように調査を設定することの必要性も述べた。

 では、住宅扶助の水準は、どのように定められればよいのだろうか。部会委員の意見は概ね、園田氏も関わって2006年に策定された国土交通省の「住生活基本計画」を基準とする方向で一致しているようであった。ここには具体的に、「健康で文化的な最低限度の住」の基準が定められている。たとえば単身者では、最低居住面積水準は25平方メートル(約15畳)。その中にはキッチン・風呂・トイレなどの「水回り」や収納が含まれている。「6畳の居室に小さなダイニング・キッチン、浴室、トイレ、押入れ」といった住まいだ。

 園田氏は、生活保護利用者の家賃について、最低居住面積水準「以上」の場合と「以下」の場合に対して、それぞれ分布を明らかにする必要性を述べ、「それで、かなりのことが分かると思います」という。貧困ビジネスかどうか、それとも一定の家賃の上積みによって本人の信用力不足が埋められているのか、あるいはサポートが含まれているのか。

「理論的な、フェアな議論ができるといいかな、と思います」(園田氏)

 厚労省は、

「検証はありうるが、考慮するのは非常に難しい」

 と難色を示したが、園田氏は強い調子で、

「難しいことは言っていません。できることを言っています。同じ住宅、同じ地域で、いくら支払われるかを見るということです。人の問題は捨象したほうがクリアに見えます」

 と反論した。

 基準を「住生活基本計画」に置くことについては、委員の阿部彩氏(国立社会保障・人口問題研究所、社会保障論)も

「ミニマムは、国交省の最低基準にせざるを得ません。この基準部会で違うミニマムを作る必要はありません。見なければならないのは、生活保護世帯がどれだけ、これ以下の住宅に住んでいるかです。一般低所得世帯と比較する問題ではありません」
と述べた。

 住宅扶助基準に関しては、論じるべき論点が多い。変動が社会へ与える影響も大きいと思われる。たとえば「住宅扶助を5000円下げますから、それ以下の住居を見つけてください」と言われて、すぐに転居することのできる生活保護利用者はどれだけいるのだろうか? 転居できるとして、社会的孤立に陥りやすい生活保護利用者が、それでも築きあげてきたご近所とのつながりを失うことは、どう評価されるのか? それは「自助・公助・共助」の「公助」を貧弱にすることに他ならないが、それでもよいのか? 大家の減収はどうなるのだろうか?

 生活保護利用者の転居後に新しい入居者を見つけること、その生活保護利用者の家賃を住宅扶助の範囲に引き下げることは、いずれも大家の負荷や収入減となりうる。それに住宅扶助が引き下げられれば、地域の家賃相場が下がるので、生活保護利用者を対象としていない大家の収入減にまでつながる可能性がある。大家は消費を抑制せざるを得ない。納税額も減少する。財務省は、このような影響まで考慮して「削減」という方針を打ち出したのだろうか? 筆者には、そうは思えない。

 生活保護基準の社会全体への影響については、基準部会でも何度か議論されている。住宅扶助に関しても、今後の議論に期待したい。