うまく行くカンパニーのトップは、どのようなタイプか?

田中 そうすると、自分の働きが会社に対してどのように貢献しているのかということと、会社の出した結果が自分の給料にどう反映されるのかということがダイレクトに理解できるわけですね。ちなみに、結果を出すカンパニー長とそうでないカンパニー長の違いってあるんでしょうか?

望月 優しいだけのトップはダメですね。「ここは俺のカンパニーだ!」という意識で自分のやりたいことを徹底的にやる。そうすると、カンパニー長自身が伸びるので、下もついていくんですね。一方、カンパニー長が仲良しクラブみたいな雰囲気でやっているのはダメですね。この10年でわかったことは、どちらかと言うと、メンバー間での摩擦を恐れず、明確に自分のポジションを取ってどんどん仕事をこなすカンパニー長のほうが結果を出しますね。

田中 何でもかんでも打ち合わせして、コンセンサスを取ってから進めているようではダメだということですね。

望月 そのとおりです。

田中 唐突ですが、望月さんは自己分析すると、どういうタイプの経営者ですか?

望月 私はストーリー戦略的なタイプですね。世の中はこういうふうになるだろう、そうしたら会社はこうなっていくだろうとストーリーを描きながら戦略を考えています。たとえば、金メダルを目指さないと金メダルを獲れないという話を社員によくしているんですが、金メダルを獲るためにどうすればいいか、ストーリーを描くことが経営者の仕事だと思っています。

田中 強力なトップダウンか、それともボトムアップもほどほどに取り入れて下の話もよく聞くとか。そのあたりはどうでしょう?

望月 基本はトップダウンですよ。だけど、ここの範囲はもう部下が自由にやっていいんじゃないのというところは任せてしまいますね。任せるときは、徹底的に任せます。「好きに決めていいよ」という部分は結構多いですね。

田中 ワンマン経営とも違いますね。

望月 ウチの社員に聞いても私のことを「ワンマン社長」とは言わないと思います(笑)。

田中 いきなり20代の社長に若返ったことによる軋轢は社内でなかったんですか?

望月 当時は、みんなが本当に変わらなきゃいけないと思っていたので、なかったですね。代替わりのタイミングがよかったと思います。

田中 経営危機の状態にある会社だって、若い社長に納得できない古参幹部たちが業務そっちのけで保身に走ったり、社内の派閥争いに勤しんだりしていますよ。本当に変わらないといけない会社でも、実際には「慣性の法則」が働いてなかなか変われません。

望月 私は社員の能力や経験は認めています。特に、ジュエリーのことは任せますよ、というスタンスでした。自分の得意な営業戦略や広告戦略、新しい流通チャネルの開拓に関しては私がやるから、あとはお願いしますね、という感じでやっていましたから。その方針は今でも変わりません。

田中 望月さんの経営論を聞いていると、極めてロジカルですが、アーティスティックな部分、センスでやっている部分もありますよね。

望月 センスの問題もあるかもしれませんが、私はビジネスの「ルール」がとても重要だと思っています。ジュエリー業界にはジュエリー業界のルールがあるので、業界の儲けのルールはどうなっているのか、これはすごく熱心に考えます。自分が当初想像していたより5年遅いけど、業界の枠組みの変化は予想どおりに進んでいます。将来を見据えたときに組むべきパートナーとは、事業の構想を徹底的に議論しているところです。

保田 ちなみにジュエリーの市場規模って、どのくらいなんですか?

望月 昔は国内で3兆円ありましたが、いまは1兆円弱に縮小してしまいました。とはいえ、1兆円もある大きな市場ですから、やはり女性はジュエリーを求めているということです。これとは別にブライダル関連の市場が2600億円、そして、アクセサリーの市場は9000億円と言われています。