第3の用語「総合診療医」の登場
NHKがもたらした新たな混乱

 この消えた家庭医が、本格的な高齢時代を迎えて今、水面下から再び浮上してきた。同省が多くの医療学会が認定する専門医が乱立している状況を整理するために設けた「専門医のあり方に関する検討会」が2012年12月、新たな専門医として「総合診療専門医」を登場させたのだ。外科専門医や皮膚科専門医など18の専門医のほかに、19番目に現れた。

 この新顔が、家庭医そのものだから面白い。「本格的な家庭医がやっと舞台に上る」と在宅医療関係者の間では評価する声が多い。

 家庭医とも、かかりつけ医とも距離を置く、第3の用語。だが困った問題を抱えている。

 というのは、病院の中には既に総合診療医がいることだ。NHKテレビが2010年から放映中の医療情報番組はその名も「総合診療医ドクターG」。

 毎回3人の若い医師が出演し、複雑な症状の寸劇を見て正しい病名を競いながら推理するユニークな番組だ。登場する医師はいずれも大手病院の勤務医であり、街中の家庭医ではない。視聴者は番組名からも「総合診療医は病院医」と思い込んでしまう。

 新しい総合診療医の制度では、専門医研修を3年間加えたため、2017年度から順調にスタートしても世の中にお目見えするのは3年後の2020年になってしまう。しかも、日本医師会は「かかりつけ医こそが総合医」と相変わらず繰り返し主張しており、用語は混乱状態に陥っているといえそうだ。

 そうした経緯を背負いながら敢えて今回、厚労省はかかりつけ医でなく、前出の「主治医」を前面に押し出してきた。家庭医とも言わない。複数の医師に診察を受けている高齢者が多い中で、最も中心となっている医師を主治医と呼んでいる。従って、介護保険で要介護度認定の判定会議に医師からの意見書が欠かせないが、それは「主治医意見書」とされている。 

 主治医を前面に掲げたのは、日本医師会への「抵抗」とも受けとられかねないが、介護保険制度の中では、主治医は定着した用語である。

 全体として、介護保険制度に医療側を引きつけようという意図が明白な診療報酬の改定だけに、主治医もその一環として見ていいだろう。だが、国民に分かりやすい、まして要介護高齢者を対象とするのであるから、主治医や総合診療医ではなく、家庭医という国際的に通用する言葉が最も適切だと思われる。厚労省の医療側へのさらなる斬りこみに期待したい。