経理部門で働く人は自分でPLやBSを作らなければなりませんから、PLとBSを作るためのルールである簿記・仕訳の知識は不可欠でしょう。
しかし、私たちは財務諸表を作る必要はありません。財務諸表が読めればいいだけです。財務諸表から会社の事業実態が把握できさえすればいいのです。そういう人たちにとって大切なのは、簿記・仕訳の細かいルールではなく、会計の全体像と基本的な仕組みを理解することです。
実は、これから会計の専門家を目指す人たちにとっても、最初に会計の全体像と基本的な仕組みを理解することは大きなメリットがあります。私の会計研修を受講してくださった方のなかには「簿記・仕訳を勉強する前に、財務3表のつながりといった会計の全体像がわかっていれば、簿記・仕訳の勉強がもっとスムーズに進んでいただろう」と言われる方が少なくありません。
著者の私自身が、簿記・仕訳の細かいルールはほとんど知りません。でも、本書に書いてある会計の知識だけで、財務諸表から会社のおおよその事業実態をつかみ、M&Aの交渉を行ない、事業再生のお手伝いをしてきました。
数字をアナログ化すれば
情報の意味が瞬時に把握できる
本書にはもう1つ、大きな特徴があります。それは、私たち会計の専門家ではない人が、財務3表から会社の状態を分析するための有効な手法を紹介していることです。
それは、PLとBSを同じ縮尺で図式化して分析する手法です。
私たち人間は、デジタルデータよりアナログデータのほうが多くの情報を瞬時に直感的に把握することができます。
例えば、いま何時かを見るときに、デジタル時計だと○×時△□分という4つの数字を読まないと時刻はわかりません。しかしアナログ時計であれば、長針と短針の角度から瞬時に時刻を読み取ることができます。
財務3表の数字を図式化するとは、まさにデジタルデータをアナログ変換することなのです。