「疲れてないから大丈夫!」
その油断があなたを後々苦しめる

 以前、こんなビジネスパーソンの患者さんがおられました。

 30代後半で証券会社に勤めるバリバリの営業職。成績も好調で社内表彰されるほどでした。
 しかし、私が診察したところ、高血圧傾向、体重増加、肝臓検査の異常、軽度の不整脈の出現……つまり、たくさんの異常が見つかってしまったのです。

 ご本人に確認しても、「全然疲れていません。それどころか、仕事が面白くて休みたくありません」と言うではありませんか。何度も精密検査の説得を試みましたが、次の受診予約にも現れませんでした。

 それから数ヵ月後、再びふらりと私の元にやってきたときには、肝臓の数値は悪化し、さらに不整脈も日常生活に支障をきたすようにまでなっていたのです。
 もちろん、ここまできたら大きな病院で専門医の治療を受けなければいけない状態です。

結局、彼は定期的な治療が必要となり、仕事のペースもしぶしぶ落とさざるを得なくなりました。早目に体の悲鳴に耳を傾け対処していたら、ここまでには至らなかったでしょう。

 やりがいのある仕事や想像力をかきたてられる仕事は疲労感をあまり感じさせません。これも「意慾」や「達成感」に疲労感が大きく影響されることから来ています。
 実際、達成感のある仕事をしている人に過労死が多いと言われるのはこのためです。

 日々の達成感が疲労を隠してしまい、その結果、「疲労感なき疲労」が貯蓄、過労死に至らしめるのです。前出の患者さんも、あのまま進めば過労死という悲しい結末を迎えていたかもしれません。