次の民法567条1項がその例です。2項の主語の位置と比べてみると、「主語を述語に近づける」という意味をわかってもらえると思います。

○民法
(抵当権等がある場合における売主の担保責任)
第567条 売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。
2 買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる
3 略

駅のトイレの張り紙を法律風にすると?

 駅のトイレの貼り紙に話を戻しましょう。

「気持ちよく使いましょう!」、「いつもきれいにご利用いただきありがとうございます」といった貼り紙が伝えたい内容を、もし法律の条文で書くとどうなるでしょうか? たぶん次のような条文になることでしょう。

(駅のトイレ利用者の義務)
第○条 駅のトイレを利用しようとする者は、他に利用する者の迷惑にならないよう、当該トイレを清潔に利用しなければならない。

 これなら「誰が何をしなければならないか」が明らかなはずです。さらにこの文章では「他に利用する者の迷惑にならないよう」と、「しなければならない」理由も簡潔に加えました。

 言い方はきつくなったかもしれませんが、主語と末尾がハッキリして論理性が高まったことは間違いありません。 


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