まず、家計の状況を把握する。目的は、いくらまでなら株式などのリスクを取った資産(リスク資産)に投資できるかの見当をつけることだ。資産と負債をそれぞれ時価で評価して比べる。さらに、毎年の収入と支出を見る。総合的に見て、1年間でいくらの損までなら耐えられるかを把握する。
健康と稼ぎに自信のある若いビジネスマンなら、金融資産の大半をリスク資産に投じても大丈夫だろうが、生活に余裕がない場合は年間に貯蓄可能な額、あるいはその半分くらいを最大損失額のメドとするといい。許容できる損失額を先に決めるのが急所だ。
許容できる損失の最大額が決まったら、そこからリスク資産に投資できる金額の上限を計算する。後で述べるような内外の株式への分散投資なら、1年間の損失額は最大で3割程度なので、投資できる額を逆算する。最大損失許容額が100万円なら、333万円といった調子だ。必ず上限まで投資しなければならないというものではないので、その範囲のなかで投資額を決めよう。問題は期待利回りだが、ならしてみると、リスク資産の利回りは債券利回りよりも5%程度高いと考えてみよう。各国の株式の長期的なリターンを調べた研究では、短期金利よりも株式のほうが6%強、リターンが高いというくらいの結果が出ている。5%は保守的な見積もりだ。
次に、正しい手順としては、リスク資産の中身(たとえば国内株への投資比率)を決めて、それぞれに充てる投資対象商品を決め、さらに、その商品をどこで買うのがいいかを決める。投資信託は、どこで買うかによって手数料が異なるし、広い範囲のなかからベストなものを選ぶべきだ。先に特定の金融機関(たとえば給与が振り込まれる銀行)に購入窓口を限定してはいけない。
リスク資産は多様だが、国内株と外国株に投資するETF(上場型投資信託)を、4対6の配分で買うといい。外貨預金、外国債券は実質的な手数料が高いし、個人には不向きだ。デリバティブを使った商品は、売り手を儲けさせるだけだ。銘柄を挙げると、「上場インデックスファンドTOPIX」と「iShares MSCI KOKUSAI Index」を買うのが簡単でローコストだ。前者は東証に上場されていて、信託報酬は0.0924%だ。後者はニューヨークに上場されているファンドで、日本を除く主要先進国22ヵ国の株式を指数化した株価指数に連動し、信託報酬は0.25%だ。両者共に、連動する株価指数は、日本の年金基金などが運用計画を立てる際に使うベンチマークとなっている。
4対6は、半々でも大差はないが、過去のデータで計算してみると、これくらいがよかった。外国株式が多過ぎると思われるかもしれないが、多数の国に分散投資されているのでMSCI(円ベース)は案外リスクが小さく、リスクの効果上は為替リスクのデメリットを分散投資のメリットが上回っている。機関投資家の運用でも、ベンチマークをコンスタントに上回ることは容易ではないので、先の2つの商品で十分プロ並みの運用ができるということだ。
共に、証券会社の窓口で買えるし、ネット証券でも扱っている会社がある。手数料が安いので、証券会社はETF販売に消極的かもしれないし、別の商品を勧めるかもしれないが、気にしないで前記の2商品を買ってしまおう。
サブプライム問題で株価が下がった今年は、この種の運用を始めるにはいいチャンスだろう。