他方、中国の状況はどうであろうか。多くの日本人は政府の宣伝によって、中国国民に強い反日感情が生まれたと考えている。しかし、中国のマスコミが中国共産党中央宣伝部に管理されていることは、中国人にとっても周知の事実である。当然ながら、そのプロパガンダ的な宣伝に対する批判的な意見を持つ中国国民も少なくない。

 そのため、中国のメディアの対日報道が厳しくなっても、中国国民は、それを必ずしも信じておらず、懐疑の目で見ている。それ故、2012年尖閣国有化以降、一貫して中国の対日論調が厳しかったのにもかかわらず、今年の調査で対日イメージの改善が見られたのである。

 それでは、なぜ2005年と2012年のような激しい反日デモが発生したのか。

 もちろん中国政府の誘導があったことは否定できない。ただ同時に、中国の研究者の間にある、「中国のナショナリズムは報復的なナショナリズムだ」との意見も注目に値する。

 つまり、中国人にとって受け入れがたい出来事が発生するたびに、激しい反日感情を噴出させるものの、事態が落着すれば、すぐに忘れてしまう。だからこそ、2013年になって中国人の訪日観光者数の持ち直しが見られるようになり、さらに今年の対日世論調査の結果も改善が見られるようになったのである。

反日でも親近感は持つ
特殊な中国人の対日観

2、中国人の対日観における分断した日本像

 筆者は以前、1949年から2008年までの中国の教科書に対する量的・質的分析を行ったことがあり、その結果についてここで紹介したい。

 2005年の反日デモ以降、中国の愛国主義教育は反日教育であり、中国人の対日イメージを悪化させた元凶というイメージが日本で定着している。そのため、多くの日本人は中国の教科書には日本のマイナスイメージばかり書かれていると考えがちである。

 たしかに、歴史教科書の近代の部分では、日清戦争や日中戦争などの衝突の側面を多く掲載していることは事実である。しかし、近代以外の部分では、日中間の友好交流や戦後における日本の経済成長など、プラス面の紹介も多かった。さらに社会科の教科書では、日本の先進技術や富士山などの美しい自然風景、戦後に高度経済成長を実現したことなども幅広く紹介している。

 このような、近代における戦争の相手と現代の先進国としての日本という分断した日本像が、中国の教科書に描かれている。

 このような分断のイメージは教科書だけではなく、報道にも見られる。歴史や政治の問題に関する報道では厳しい論調が多いが、経済や文化に関してはプラス面の報道も常に見られる。日中関係が悪化しているなか、肯定的あるいは好意的な日本報道を引き続き中国で行えるのは、経済大国日本に対する関心や日本製品に対する信頼度の高さのみではなく、ソフトパワーの大きさも忘れるべきではない。