というわけで、僕らはこの競争社会で“勝ち組”になるべく、利潤獲得に向けて努力する。財産の多さは、物質的な豊かさ(つまりいちばんわかりやすい「幸せ」)に直結するからだ。そしてその利潤を得るための原動力とすべく、僕らは日々競争力と欲望に、さらに磨きをかける。
僕は代々木ゼミナールで、大学受験生に政経・倫理・現代社会などを教えているが、予備校で教え方に磨きをかけるのだってそうだ。「なんで?」と問われたら、そりゃもちろん「生徒の合格のため」とは答える。けれどその瞬間、僕の頭をかち割ったら、そこにあるものは立派な家やピカピカの車、札束の風呂に金歯……ちょっとウソも混ざったけど、だいたいこんなもんだ。
じゃ、その資本主義が現実の社会の中で誕生し、発展するためには何が必要か? それはこの二つだ。
(1) 社会における「商品経済」の発達
(2)「資本家」と「労働者」という二つの階級
「え? そんな当たり前のもの、大昔からふつうにあるでしょ?」と思った人は不合格。それは現に確立された資本主義社会に生きる人の発想。
実は(1)も(2)も、発展したのはかなり最近で、歴史の中では驚くほど新しい要素だ。なぜか? それは洋の東西を問わず、この二つが時の支配者にとって有益なものではなく、むしろジャマだったからだ。
一体どういうことか? 次回からそれをヨーロッパ、特に産業革命の国・イギリスを中心に見ていこう。(第2回に続く)
(※この原稿は書籍『やりなおす経済史』から一部を抜粋・修正して掲載しています)