フランスは、自国内に化石燃料資源をほとんど持たない事情もあって、電力供給の約8割を原子力で賄っている。また、外国から積極的に再処理業務を受託することを通じて、大きな外貨獲得につなげている。

 フランスでは、再処理施設としてラ・アーグにUP−2(800t/年)と、最新鋭のUP−3(800t/年)の両方があり、これまで順調に運営されてきている。しかも、フランスのUP−3の稼働率向上や外貨獲得のために、フランスの核燃料サイクル事業会社であるコジェマ社(現・アレバ社)がドイツ電力11社と再処理契約を締結した。契約金額は100億フランに上った。

 こうしたフランスの動向を見るにつけ、日本における今般の“東海再処理施設の廃止の決定”はあまりにも早計だ。フランスは日本と同じ資源小国。原子力事業を巡るフランスの動きは実に強かであり、日本としても学ぶべき点は多々ある。

 上述したように韓国が『再処理獲得』を実現し、今の日本国内の感情的過ぎる“空気”が続くとすれば、世界ではおろか、アジアにおいてさえ、『再処理先進国』の座を韓国に奪われかねない。

 そして今後、日本の再処理技術が原子力発電の開発・拡大を続けるアジア近隣諸国におけるエネルギーセキュリティに貢献していくための、有用かつ有効な『貿易財』になっていくことも十分あり得る。いや、むしろ日本は積極的にその実現に向けて諸々仕掛けていくべきだ。そうしたダイナミックな発想こそが、国家戦略の礎であるはずだ。危機は無い方が良いが、危機感が無いのは国家的危機をもたらす素となりかねない。

日本の中韓への影響力や
発言力は発揮できなくなる

 先のJAEAの決定に関して私が疑問に思う最大の理由は、東海再処理施設が東日本大震災ではビクともしていないことと、大津波による被害を受けた東海村でも安全上の明確な問題点が見当たらないことだ。新規制基準が原子力事業の安全性の確保・向上に本当に資するものなのかかどうか、今一度確かめた上で東海再処理施設の存廃を再考すべきだ。

 今月2日の経済産業省・総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(第7回)で、米国科学者連盟理事長のチャールズ・D・ファーガソン氏は、安全最優先や多重のリスク管理、核不拡散の推進、気候変動の防止など7つの原則の下で国際協力を進める必要性を強調した。福島事故からの復興を実現するために多国間協力を強化することや、“安全神話”からの脱却に向けて国会による原子力規制委員会の監視を強化することなどの具体的提言を行った。

 ファーガソン氏の提案の根底には、現行の原子力規制委員会があまりにも唯我独尊であるため『独立』ではなく“孤立”していることのみならず、エネルギー政策当局・原子力事業者・周辺地域を含めた国民とコミュニケーション不足に陥っていることへの大きな懸念があるようだ。

 その上で、日本の原子力事業が後退してしまうと中国や韓国に対する発言力が失われ、原子力安全や核不拡散の取組みに悪影響を及ぼす可能性があるとの危機感を表した。同時に、エネルギーミックスの上でも、気候変動対策の面でも、米国や新興国のためにも、日本の主導的役割に大きな期待を表明した。

 そうした視点を踏まえれば、新規制基準で再処理施設の命運を安易に決めるのでは、後世に大きな禍根を残すだろう。米国原子力発電運転協会(INPO;1979年3月のTMI原発事故が契機となって原子力発電所の安全性と信頼性の向上のための支援組織として、1979年12月に米国の原子力発電事業者により非営利法人として設立された組織)など海外事例を踏まえながら、新規制基準の妥当性について議論を重ねてからでも遅くはない。そして、世界の再処理事業を巡る状況からすると、日本が六ヶ所再処理工場の竣工を目指すことの重要性が、日本国内でも再認識されることになろう。

 実際、六ヶ所再処理工場では、既に昨年5月にすべての工程が問題なく運転できることが確認済みだ。六ヶ所再処理工場は、今すぐ竣工し、再処理を開始することが可能な状況にある。

 六ヶ所再処理工場はNPT(核兵器不拡散条約)体制の維持に資する原子力平和利用の優等生国・日本のモデルプラントであるだけではない。日本のエネルギーセキュリティ確保の象徴、人材育成の拠点、世界トップレベルの安全性を備えている。一刻も早い事業開始が待たれる。