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 グローバルファンドは三大感染症対策にフォーカスしていますが、われわれの基本は保健制度そのものをきちんと作ることです。それによって、三大感染症だけでなく、新興感染症などにも対応できるようになります。現在西アフリカをはじめ、アメリカやヨーロッパでも脅威となっているエボラにも対処できるでしょう。

――三大感染症の病気自体は昔から存在し、人々を苦しめてきました。特に、サブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカ諸国は長年にわたって三大感染症に悩まされています。なぜ撲滅できないのでしょうか。背景には何があるのでしょうか。

 マラリアや結核は、それこそ何千年と人類を苦しめています。HIV/エイズはこの数十年。しかし、グローバルファンドをはじめとした世界各国の努力によって、26ヵ国において、新たな感染患者数は50%も減っている。2002年以降、HIV/エイズも劇的な進捗が見られます。実に3400万人もの患者がおり、高い感染率だった。そういうことから考えれば、かなりのスピードで進歩しています。ただ、完全な病気の封じ込めまでは、なかなか難しいのです。

 アフリカ諸国では、日本や欧米諸国と同じように、国民全体のHIV/エイズの感染率は低い。ただし、南部アフリカに多いのですが若い女性、男性と性行為をする男性やセックスワーカー、麻薬中毒者、受刑者、そういう人たちはHIV/エイズの感染率が25倍から50倍という現実があります。彼らにはスティグマがあり、差別もされ、社会から遠ざけられてしまっている人たちです。そうすると、医療・保健や支援サービスが受けられないままになってしまいます。東欧でも、同様の人たちにHIV/エイズが広がっています。

 結核はエイズと同様の集団に感染が見られる病気です。しかし結核は治療が可能なので、かなりの進歩が見られます。ただやはり、医療・保健や支援サービスにアクセスできない人たちは、深刻な状況です。ちなみに、アフリカではHIV/エイズと結核は同じ人たちを襲うことが多い。

 これらの問題の根底には、保健制度そのものの脆弱性があります。

ナイジェリアでは感染症が原因で
GDPで推計40~50億ドルが喪失

――国の保健制度を強めるには、その国の経済の強さや健全な財政が必要なのではないでしょうか。そして、それは単に保健制度ということではなくて、国全体に関わることです。グローバルファンドはどうやってそうした大きな問題にアプローチするのでしょうか。

 日本政府は「人間の安全保障」を推進しており、保健分野への投資を重視している。それは安倍政権が掲げる「積極的平和主義」の貢献の一部と捉えられています。

 保健そのものに投資をするということは、保健というひとつの分野を超えた影響力を持つということです。たとえば労働環境、衣食住、教育などです。とりわけ教育は保健分野と密接で、この2つがなければ、経済成長は遂げられないとも言えます。