「風格」と「人格」が
にじみ出る仕事術とは

矢野 高野さんの『リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間』(かんき出版)に、スマトラ沖地震に遭われたファミリーが、ボロボロの格好でホテルに現れたというお話がありましたね。そのお客様を見られたとき、一目で紳士・淑女であることを見抜かれたそうですが、どこで判断できたのですか。

高野人格はにじみ出るものなのです。たとえ服がボロボロで汚れていたとしても、立ち居振る舞い、表情、目線の使い方を見れば、一目でわかります。これは長年にわたり、大勢の人と接することによって、自然と身につきます。後はシックスセンス(第六感)ですね。ホテルマンにとって絶対に必要なもので、すべてのトレーニングはこれを鍛えるためにあると言っても過言ではありません。人材採用も最後の最後はシックスセンスで決まります。

矢野 以前、アナウンサーの先輩から、タクシーに乗って行き先を告げたとき、「『アナウンサーの方ですか?』と運転手から聞かれるようになれ」と言われました。「アナウンサーのオーラというか、人間力のようなものを身につけろ」とその先輩は言いたかったのだと思います。それ以外にも、「高級レストランに行ったとき、どの席に招かれるかということを覚えておけ」とも言われました。そのレストランにふさわしくないお客と思われると、目立たないように奥の席に案内されるのですね。だから、「なるべくいい席に案内されるような人間になれ」と言いたかったのでしょう。

高野 自分をよく見せるコツ、テクニックを学ぶ前に、まずは人間力を磨く必要があるのでしょうね。やはり、人間力に秀でている人というのは、その周りに心地よい風が吹いているものです。

矢野 風、ですか。

高野 はい。それは、「風格」と言い換えてもいいと思うのですが、それを身につけるためには、生き方、自分が大事にしたいものをしっかりと考え、実践していくことだと思います。

矢野 相手から信頼を勝ち取るためには、やはり人間力を高める必要があるのですね。コミュニケーションは言葉のやりとりだけでなく、非言語の部分が重要だと思いました。