追加緩和(QQE2):
まさにサプライズ

 10月31日、日銀は追加緩和(QQE2)に打って出た。多くの市場参加者にとってサプライズであった。実際株価は急騰し、円は急速に減価した。筆者も「追加緩和はない」と見ていた立場であり、同日は自分の不明を恥じた。

 日銀は追加緩和の背景を「消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている」と説明した。その上で「現在の物価下押し圧力が残存する場合、デフレマインドの転換が遅延するリスクがある」とし、追加緩和を正当化した。

黒田総裁:わずか3日前と
言っていることが全く違う

 しかし、この説明を聞いても筆者の戸惑いは拭えなかった。それまでの日銀の説明と著しく一貫性を欠くからだ。

 たとえば追加緩和のわずか3日前(10月28日)、黒田日銀総裁は参議院財政金融委員会で、「日本経済は『CPI前年比2%』の『物価安定の目標』の実現に向けた道筋を順調にたどっています」と明言した。

 物価は「順調に」目標に向かって進んでいると、たった3日前まで黒田総裁は国会で語っていた。追加緩和の背景として日銀が挙げた「消費増税後の需要の弱さ」や「原油価格の大幅下落」なども、その時点で十分認識できていた。

 それにもかかわらず、国会では全くそれらに触れず、物価の順調な推移を強調した。日銀の発言を丁寧にフォローしていた向きには、追加緩和の可能性を高く見る理由は見出せなかったであろう。