「決められない政治」は変わらなかった

 最後に、今回の解散総選挙について、視点を変えて考えてみたいと思う。それは、安倍首相は「決められない政治」から脱却できなかったということだ。

 2013年7月の参院選の勝利によって、安倍首相は、衆参の多数派が異なる「ねじれ国会」の解消を実現し、「決められない政治」からの脱却を宣言していた。だが、現実的には、これまで安倍内閣は重要政策の多くを決められないでいる。

 2013年に「国家安全保障会議設置法」「特定秘密保護法」は成立させた。しかし、2014年に入ってからは、集団的自衛権行使関連法改正を来春以降に先送り、労働者派遣法改正案の審議も先送り、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉は一向に進まず、成長戦略もなかなか実現に至らない。

 安倍内閣は衆参で過半数を確保しているのだから、遠慮なく次々と重要政策を実現していけばいいのだが、現実にはなかなか難しい。女性閣僚のスキャンダルもあり、内閣は国会を強行突破するような体力を失っている。結果、衆院を解散せざるを得なくなったと見ることはできるだろう。

 まさに、以前この連載が論じたように(第64回を参照のこと)、族議員やさまざまな業界の政策・利害の対立の調整は簡単ではない。景気対策を求める声は尽きることがない。野党が先鋭化して強硬な反対に出ると、それを強引に押し切るのは難しい。政治とカネの問題は予想しないところから突如噴き出してくる。自民党内のライバルは面従背反。内閣の支持率低下を静かに待っている。結局、なんでも簡単に決められそうに見えながら、安倍内閣は衆院解散という国会の「リセット」を必要とした。日本政治は、単純ではない。「複雑怪奇」なのである。