誰もが繰り上げ返済を
実行できるわけではない
——多くの人が、60歳までに完済のメドが立たない住宅ローンを組んでいるわけですね。
住宅ローンの獲得競争が激化した結果、最近は80歳までの住宅ローンが組めるようになっています。実際、モデルルームで45歳の人が35年ローンを勧められるというケースがあるんです。
「80歳まで返済し続けるのは無理」と難色を示しても、販売員は「繰上げ返済していけば大丈夫」などと背中を押します。しかし、ここで「そうか、繰上げ返済すればいいのか」と安易に考えるのは非常に危険なんです。子どもの教育資金や老後資金を準備しながら繰上げ返済をしていくのは、至難の業だと言っていいでしょう。
最近は、販売員から「60歳以降に住宅ローンが残っても、男性はだいたい80歳前に亡くなりますから、あとは団体信用生命保険(団信)で完済できますよ」と言われたケースもありました。
もちろん、こんなセールストークでその気になってはいけません。男性が長生きすることも十分考えられますし、仮に70歳で亡くなるとしても、それまで住宅ローンの返済が続けば貯蓄を大きく取り崩しながら生活していくことになるでしょう。
いざ夫が亡くなった後、残された妻は生活費に困ることなく暮らしていけるのでしょうか?
——住宅ローンを組んで家を買うのが怖くなりそうなお話ですが……。
大切なのは、住宅ローンの「組み方」です。老後貧乏になるかどうかは、住宅ローンを借りるかどうかではなく、住宅ローンをどう組むかにかかっていると言ってもいいでしょう。マイホームを買いたいと考えている方には、「理想のローンは必ず見つかりますから、大丈夫ですよ」とお伝えしたいですね。
改訂5版の『住宅ローンはこうして借りなさい』では、老後貧乏になる人が少しでも減ることを願い、たくさんのご相談を受けてきたリアルな経験を踏まえて「安心」で「おトク」な住宅ローン選びのコツやテクニックをご紹介しています。
できる限りリスクを排除したプランが立てられるよう、資金計画のページには十分なボリュームを割きました。しっかりポイントさえ押さえれば、住宅ローンを組むことに不安を感じることはなくなるんです。
(取材・文 千葉はるか)