真山 とにかく彼らは秘密主義で、村木さんの一件でも問題になりましたが、メモを残すこともなく、すべて処分してしまいます。それに、そもそも捜査を行うのは基本的に警察の役割です。犯行を裏づける証拠がそろったうえで、「それで間違いないよね?」と最後に検察が引き継ぐわけです。
検察にもガサ入れの専門チームがあるものの、非常に小規模です。だから、彼らがすることといえば、「コイツがやった」と決めるつける仕事がほとんどです。結局、特捜部が失墜してしまったのも、「まず犯人ありき」で無理やり自白をとるような、供述調書に頼る捜査から抜け切れなかったからです。「証拠が何より重要」という本来の姿勢を見失っていたのです。
司会 だからこそ、主人公の冨永真一は、検事として「証拠に則って罪を問う」という「証拠主義」の姿勢を徹底しているわけですね。冨永真一は、小説の冒頭では法廷に立つ公判部に所属していて、後に特捜部に異動します。
真山 特捜検事は、検察の内部から推薦を受けて配属されるそうです。それで、まず富永を推薦に足る人物にしようと設定しました。ある特捜OBで大きな事件を担当したことがある人物には、1年以上にわたってお話を伺ったのですが、とにかく眼光が鋭く、何とも言えない威圧感が漂っていたのが印象的でしたね。彼と私、それに編集担当の薦田さんの3人で、「まずはお目にかかって食事をしましょう」という話になったのですが、私が10分ほど遅刻してしまったんです。
薦田 しばらくの間、初対面の特捜OBと2人きりでした。あまりに怖くて、すべて自白してしまいましたよ(笑)。
日本が誇る固定燃料ロケットを
世界は羨望し、脅威にも感じている!?
司会 宇宙に関しても、かなりの数の取材を重ねたとうかがっています。
真山 日本のロケット発射場である種子島宇宙センターと内之浦宇宙空間観測所のみならず、米国のNASAにも取材に赴きました。実は、大きく分けてロケットには2つの系統があるんです。ひとつは「液体燃料型」で、NASAなどが打ち上げてきた有人ロケットがこれに該当します。そして、もうひとつが日本が強い「固体燃料型」です。糸川英夫教授が開発した日本初のペンシルロケットがルーツで、その最新型がイプシロンロケットになります。
通常、ロケットの打ち上げといえば、数多くの関係者が管制室で見守っている光景を思い浮かべますよね。ところが、日本のイプシロンはパソコンと4人のスタッフがいれば、それだけで簡単に打ち上げられるんですよ。
それ以外にも革新的で独創的な技術が多数あり、米国がその技術を欲しがるのは当然。JAXA(日本宇宙航空研究開発機構)とは親密な間柄ですから、NASAも設計図自体は簡単に手に入られるそうですが、それでも米国では同じ性能のロケットを完成させられません。なぜなら、日本固体燃料ロケットや偵査機の多くは基本設計図から多数の改良が加えられていて、詳細な部分などは口伝だからです。