古賀 だからヒット商品って、誰かが小さな「嫌われる勇気」を発揮したときにようやく生まれるものじゃないか、という話をしていて。
岸見 おもしろい考え方ですね。アドラー心理学的に少し補足すると、アドラーは困難にぶつかったときの解決策として「より大きな共同体の声を聴け」と言っています。会社という小さな共同体の範疇で考えれば、「企画会議を通すこと」が大切になり、「会議に通りやすい企画を考える」ことを優先したくなるでしょう。でも、会社という共同体を横に置いて、たとえば「日本全体」という共同体の単位で物事を考える。そうすれば、たとえ社内で猛反発を食らっても「この商品を世に出すことが、みんなのためになるんだ」と信念を貫くことができる。嫌われる勇気を持って、自分のやるべき仕事をやり抜くことができる。目先のことに汲々としていたら、なんら大きな仕事はできないでしょう。
古賀 そうですね。もしも「より大きな共同体」の利益になるプロジェクトに反対されるのであれば、そんなちっぽけな共同体からは飛び出してしまえばいい。
──なるほど。アドラー的な考え方が根づいた会社は、働きやすいだけでなく、ヒット商品が生まれる可能性が高いのかもしれませんね。
岸見 わたしはビジネスの専門家ではありませんので、そこまでは確約できません(笑)。ただし、いまアドラーの考えを取り入れようとしている企業が増えていることは事実ですし、講演終了後の質疑応答を振り返ってみても、先見性を持った企業が多いように感じます。