『嫌われる勇気』、続編決定!?

──それでは最後に、今後『嫌われる勇気』やアドラーの思想がどう広がっていってほしいか、教えていただけますか。

古賀 僕としては、アドラーの思想はもちろん、哲学者・岸見一郎というフィルターを通して浮かび上がる「岸見アドラー学」に魅せられた側面が強いんですね。いま『嫌われる勇気』が韓国や台湾でも好評だという話を聞いて喜んでいるところなのですが、アドラー心理学の本場である欧米の読者にも読んでもらいたい。これは大きな夢です。

岸見 制作当時のことを振り返ると、こうやって古賀さんと議論する時間は、ほんとうに楽しいものでした。これは教育現場でも同じことがいえるのですが、古賀さんからの質問や意見の中に、わたし自身が思ってもみなかったような発見がたくさんある。「なるほど、そういう見方もあるのか」「そんなふうに考えることもできるのか」と、こちらが多くのことを教えてもらえる。決してわたしが一方的に教えを諭すのではなく、お互いが気づきを与え、発見の喜びを分かち合っていく。そしてある部分においては、わたしを追い越していく。これは教育に携わる者にとって、なによりもうれしいことです。

──教育者の喜びは、教え子が自分よりも大きく育つことなんですね。

岸見 間違いありません。いま『嫌われる勇気』を読み返しても、わたし自身たくさんの発見があります。わたしひとりの力では、とてもつくれなかった本だと思います。

古賀 もちろん僕にとっても、岸見先生があってこその一冊です。

われわれは承認欲求から<br />逃れられるのか?

岸見 ただ、アドラー心理学が少しずつメジャーになるにつれて、他者を操作するためのツールとして彼の考えを利用する人が出てくるのではないか、という不安はあります。

古賀 そうですね。「アドラー心理学の決定版といえるような本にしたい」と思い、やれることはぜんぶやりきったつもりで刊行しましたが、まだ語り切れていないところはたくさんありますよね。今日の対談の中でも、はっとさせられる言葉がいくつもありました。

──では、続編のご予定などは?

岸見 具体的な予定はありませんが、もう一度「青年」と熱い議論を交わして、もっと深いところまで降りていきたい、という気持ちは強くありますね。

古賀 いいですね! とりあえず来年早々にでも京都のご自宅をお訪ねしますので、また思う存分議論させてください。もしかしたら、続編のスタートになるかもしれません。

岸見 いつでもお待ちしています。

──われわれ読者も楽しみにしています! 本日はどうもありがとうございました。

(終わり)

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