田村 ありがとうございます。では続いて劉さん、お願いします。

 事業の紹介を始める前にひと言申し上げますと…私は年間6万4000ドルもの学費を払ってビルから先ほどの24ステップを学びましたので、今日皆さんはこのセミナーをタダで聞けるなんて非常にラッキーだな、と(笑)。

素晴らしい起業メンバーと出会うことは<br />結婚相手を見つけるのと同じかそれ以上に難しい<br />〜MIT式スタートアップに学ぶ〜右から高萩さん、劉さん、ビルさん、田村さん高萩昭範氏:ウェアラブル・スマートトイ「Moff Band」を提供する株式会社Moffの代表取締役。京都大学卒業後、経営コンサルティング会社A.T.カーニーを経てメルセデス・ベンツ日本にて自動車のプロダクトマネージャーを務める。その後独立してWebサービスを立ち上げ後、2013年10月株式会社Moffを設立。2014年4月、ウェアラブルセンサー解析技術を組み合わせた拡張体験プラットフォーム「Moff Band」が米国クラウド・ファンディングKickstarteにて目標の4倍となる支援額を達成。2014年10月に販売を開始し、日米Amazonの電子玩具カテゴリーにて2位にランクイン。 劉延豊氏:オンライン化が進むテレビのターゲット視聴者に効率的にアプローチできるソリューションを提供する「TVision Insights」CEO/Co-founder。MIT Sloan MBA Candidate Class of 2015。日本で小学校と大学時代を過ごし、日・中・英語のトリリンガル。東京工業大学工学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社を経て、共同創業者として中国にて游仁堂(Yo-ren Limited)を設立。游仁堂は上海のデジタル・マーケティング会社として10社以上のナショナル・クライアントを抱える。近年、米国で設立し注力するのが「TVision Insights」である。 ビル・オーレット氏:マサチューセッツ工科大学(MIT)で起業家教育を担うMITマーティン・トラスト・アントレプレナーシップ・センターのマネージング・ディレクターであり、人気講師のひとりでもある。みずから創業したセンサブル・テクノロジーズ社など複数のベンチャー企業の社長・役員ほか、MITスローン・スクール・オブ・マネジメントの上級講師を兼務。IBM勤務を経て、MITスローン・スクールで経営を学んだのち起業した経験をもつ。センサブル・テクノロジーズ社は20ヵ国へ進出し、24以上の賞を受賞、『フォーチュン』誌やビジネスウィーク、ウォールストリート・ジャーナル等に取り上げられている。ハーバード大学卒(エンジニアリング)、MITスローン・スクールで経営学修士取得。田村大氏:株式会社リ・パブリック共同代表。東京大学i.school共同創設者エグゼクティブ・フェロー。2005年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。博報堂イノベーションラボにてグローバル・デザインリサーチのプロジェクト等を開拓・推進した後、独立。人類学的視点から新たなビジネス機会を導く「ビジネス・エスノグラフィ」のパイオニアとして知られ、現在は、地域や組織が自律的にイノベーションを起こすための環境及びプロセス設計の研究・実践に軸足を置く。共著に『東大式 世界を変えるイノベーションのつくりかた』(早川書房)など。京都大学、九州大学、お茶の水女子大学、神戸情報大学院などで非常勤講師。情報処理学会学会誌編集委員、International Journal on Multi-disciplinary Approaches to Innovation編集委員等。内閣府、経済産業省、科学技術振興機構等でイノベーション推進・人材育成に関する研究会委員を歴任。

 MITでのビルの授業はレベル別に設定されていて、私は初心者向けのコースから入って、2014年からは加速度的に実行するためのコースを受けています。MITにある6チームのファウンダーと週1回集まって議論し、ビルから個別のフィードバックを受ける形です。ここまできて24ステップをかなり実践できているほうではないでしょうか。

 私は東京工業大学を卒業したあとコンサルティングファームを経て、中国でデジタル向けの広告代理店を共同創業しました。その事業を通じて痛感したのは、デジタルが進展した今も実のところ、広告主は予算の9割をテレビに振り向けているという事実です。

 そして、デジタルの感覚からすると、視聴率の分野は古いままのように感じられました。日本でもそうですが、視聴率の調査方法というのは、ついている番組を自動的によみとる機械をつける調査はいいほうで、一部調査ではまだ手書き式で記入してもらっているような状況です。

 これらの方法だと、テレビでその番組をつけたまま視聴者がペットと遊んで見ていなくても、「見ている」としてカウントされてしまいます。つまり視聴率の実態データはとれていないわけです。これも非常におかしいと思っていたので、培ってきたデジタル・マーケティングの知見を活かしてテレビ広告を効率化したい、と考えて今のビジネスを起こしました。

 具体的にはある装置を置いて、視聴者の行動を科学的に測るというソリューションです。第1に、顔面の識別技術を活用しようと考えています。第2に「ながら」見視聴の比率を判別できないかとも考えています。テレビがついていても、その部屋に人がいなかったり、人がいてもテレビを見ないでスマホをのぞきこんでいる、といった正確な状況まであぶりだすわけです。

 一番分かりやすいのはコマーシャルの間のデータです。従来の計測方法であれば、その番組が映し出されていれば「見ている」という結果が出ていました。でも、みなさんも普段の行動を考えて頂くとわかるように、だいたいCM中はトイレに行ったり、友達としゃべったり、スマホをチェックしたりしますよね。私たちの計測方法だと、CM中はテレビが見られていないことが明確に分かります。

 通常、同じ番組内のCM枠であれば価格は差がついていません。しかし、これから私たちの計測法による厳密な視聴率を使えば同じ番組中でも枠ごとに価格差をつけるなどのインサイトを提供できて、最終的に、広告主の出稿プランニングを最適化できるーーそれが今手がけているビジネスの概要です。長期的には、テレビ広告市場がより効率的になり、対デジタルという観点で見たときに、広告市場全体の活性化につながればと考えています。