田村 ありがとうございます。では続いて劉さん、お願いします。
劉 事業の紹介を始める前にひと言申し上げますと…私は年間6万4000ドルもの学費を払ってビルから先ほどの24ステップを学びましたので、今日皆さんはこのセミナーをタダで聞けるなんて非常にラッキーだな、と(笑)。
劉 MITでのビルの授業はレベル別に設定されていて、私は初心者向けのコースから入って、2014年からは加速度的に実行するためのコースを受けています。MITにある6チームのファウンダーと週1回集まって議論し、ビルから個別のフィードバックを受ける形です。ここまできて24ステップをかなり実践できているほうではないでしょうか。
私は東京工業大学を卒業したあとコンサルティングファームを経て、中国でデジタル向けの広告代理店を共同創業しました。その事業を通じて痛感したのは、デジタルが進展した今も実のところ、広告主は予算の9割をテレビに振り向けているという事実です。
そして、デジタルの感覚からすると、視聴率の分野は古いままのように感じられました。日本でもそうですが、視聴率の調査方法というのは、ついている番組を自動的によみとる機械をつける調査はいいほうで、一部調査ではまだ手書き式で記入してもらっているような状況です。
これらの方法だと、テレビでその番組をつけたまま視聴者がペットと遊んで見ていなくても、「見ている」としてカウントされてしまいます。つまり視聴率の実態データはとれていないわけです。これも非常におかしいと思っていたので、培ってきたデジタル・マーケティングの知見を活かしてテレビ広告を効率化したい、と考えて今のビジネスを起こしました。
具体的にはある装置を置いて、視聴者の行動を科学的に測るというソリューションです。第1に、顔面の識別技術を活用しようと考えています。第2に「ながら」見視聴の比率を判別できないかとも考えています。テレビがついていても、その部屋に人がいなかったり、人がいてもテレビを見ないでスマホをのぞきこんでいる、といった正確な状況まであぶりだすわけです。
一番分かりやすいのはコマーシャルの間のデータです。従来の計測方法であれば、その番組が映し出されていれば「見ている」という結果が出ていました。でも、みなさんも普段の行動を考えて頂くとわかるように、だいたいCM中はトイレに行ったり、友達としゃべったり、スマホをチェックしたりしますよね。私たちの計測方法だと、CM中はテレビが見られていないことが明確に分かります。
通常、同じ番組内のCM枠であれば価格は差がついていません。しかし、これから私たちの計測法による厳密な視聴率を使えば同じ番組中でも枠ごとに価格差をつけるなどのインサイトを提供できて、最終的に、広告主の出稿プランニングを最適化できるーーそれが今手がけているビジネスの概要です。長期的には、テレビ広告市場がより効率的になり、対デジタルという観点で見たときに、広告市場全体の活性化につながればと考えています。