毎年900もの新会社を生み出すMIT式スタートアップの教科書『ビジネス・クリエーション!』の著者ビル・オーレット氏の来日に合わせ、新進気鋭の起業家である高萩昭範氏(Moff代表取締役)と劉 延豊氏(TVision Insights CEO/Co-founder)、モデレーターとして田村大氏(リ・パブリック共同代表、東京大学i.school共同創設者エグゼクティブ・フェロー)を迎えて、「起業家のためのゼロからうみだすビジネス・クリエーション術」セミナーを昨年末開催しました。どうすれば新たなビジネスを生み出せるのか? MITの何がその高い起業実績につながっているのか?という秘密に迫るセミナーの内容を3回に分けてお送りする第2弾! パネル・ディスカッションの前半です。

田村 ここからは、ビル・オーレットさんのほかに、起業家である高萩昭範さん(Moff代表取締役)と、劉延豊さん(TVision Insights CEO/Co-founder)をお迎えして、パネル・ディスカッションを始めます。おふたりとも様々なコンセプトを取り入れながらスタートアップを実践した点では共通しますが、高萩さんはほぼ独学で起業された一方で、劉さんはいくつかの起業を経ていまMITで学びながら新たな事業を起業されているという違いもあります。まずは、おふたりから簡単に事業の紹介とこれまでの経緯をご説明頂きながら、ビルさんの意見を聞いていこうと思います。まず高萩さん、お願いできますか。

高萩 私たちは、自分の周りにあるものすべてをおもちゃに変えるというコンセプトのもと、ウェアラブル・スマート・トイの「Moff」を作っています。こういう製品に至るまでに相当数のインタビューを経て、ふたつの課題を解決しようと考えました。

 第1は、おもちゃが子ども部屋に溢れかえっているのに新たに買っては捨てるという行為がエコに反していて親として苦痛だということ、第2は、モバイルやタブレットが普及したことで子どもたちが長時間にわたって画面に向かって遊んでいる時間が非常に長く、不安や罪悪感を感じるということ。画面に向かっている間、遊びに必要な手のスキルや対人コミュニケーション、広い意味のクリエイティビティが制約されることに親として抵抗感があるという人が非常に多かったんです。

 今の画面ユーザー・インターフェースを採用している限り、その懸念は払拭できないと考え、もっと身体を動かしアクティブに遊んでもらえる、なおかつひとつのデバイスで様々な遊びを実現できる今のようなデバイスを作りました。お陰様で昨年、キックスターター(映像で製品をお披露目しつつ一般から出資を募る、米国のクラウド・ファウンディングサイト)で成功して目標額を上回る8万ドルを調達できたので量産化にこぎつけ、日米のアマゾンでも販売を開始しまして、いずれも電子玩具カテゴリーで2位にランクインしました。日本では「妖怪ウォッチ」の次です(笑)。

 現状は子ども向けのおもちゃとして展開していますが、今の画面ユーザー・インターフェースの課題を解決して、ウェアラブルを身につけることで身体の動きを大きくすることに応用できると考えていますので、ヘルスケアやメディカル分野にも活かしていきたいです。