「充足」を表す「3」
たとえば、「三拍子揃う」という慣用句。由来は、能楽の囃子で3種の楽器の拍子が揃っていることで、「必要な要素がすべて備わっている」という意味です。
つまり、ここで使われている3は、「充足」している状態を表しているのです。これは、多くの人が抱いている3のイメージに近いのではないでしょうか?
神話にも、充足を表す「3」がしばしば登場します。たとえば、古事記に紹介されている「三種の神器」は、皇位継承の際に代々伝えられてきた宝物で、「鏡」「勾玉」「剣」です。それぞれ、太陽、月、地球を示しており、古代神話では、この3つで宇宙全体を表現していたとのことです。
そして現代。戦後の高度成長期には、テレビ・冷蔵庫・洗濯機が「完璧な中産階級」を象徴する三種の神器としてもてはやされました。
「創造」を表す「3」
「三人寄れば文殊の知恵」という故事成語を思い出してください。これは、たとえ凡人でも3人集まって話し合えば、文殊菩薩のようなすぐれた考えを創造できるという意味です。2人であれば意見が対立し、4人以上になると収拾がつかなくなります。
創造を表す「3」は、日本の創世神話でもはっきり描かれています。すなわち、万物の創造は3つの段階からなるとしているのです。
天地が創造される以前は、すべてが混沌とした無の世界。それが、天地創造の第1段階で、世界は天と地に分かれ、第2段階で万物の親であるイザナキとイザナミがあらわれ、第3段階でこれらの神々が万物を生成したと伝えられています。
神話の真偽はともかくとして、神話が語り継がれるプロセスのなかで「3」の意味が定着し、現代でもさまざまな場面で「3」が使われるようになったのは事実です。