本特集は、地味な「分散投資」の特集である。ド派手な儲け話はない。
だが、5年、10年、15年と先々を睨み、将来に備えておカネを殖やしていくためには、「ETFなどの低コスト商品を使った分散投資」こそが頼もしい味方となってくれる。
投資というのは、企業の活動におカネを提供し、それによって積み上がる利益を貰おうという行為だ。もっと大きく言えば、経済成長の果実を得ようというのが投資である。
日本経済よりも成長余地の大きい中国、ブラジル、インドなどの新興国は、もちろん有力な投資対象となる。
だが、中国なら中国、ブラジルならブラジルと、ある1国だけに賭けるのは「ケガのもと」であり、得策ではない。そこで「分散」が出てくる。
1つだけにベットするよりも複数の新興国株全体に賭けたほうが、期待リターンをそう下げることなく、リスク(リターンの変動幅)を下げることができる。さらに日本など先進国株、そして債券など株以外の資産を組み合わせると、もっとリスクは下がる。
こうした分散投資の効果を得ようというときに、「金融資商品なら何でもOK」というわけではない。「低コスト」の商品でないとダメだ。
日本の投信業界には、残念ながら高コスト構造が定着してしまった。顧客にとってよい商品ではなく、売り手にとって都合のよい商品ばかりが跋扈する。
その中に隠れている「本当に買ってよい低コスト商品」を厳選することは、その後の投資成績に直結する。
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投資信託業界の2009年ヒット番付の「東の横綱」は、間違いなく「通貨選択型投信」だ。純資産ベスト5中、4本までがこうした「通貨選択型」。いずれもブラジル・レアルコースだ。
弊誌はかねて「こうした通貨選択型投信に飛びついてはダメ」と指摘してきた。これらは投資対象の通貨(米国ドルなど)を売ってブラジルレアルなどを買う為替ヘッジがミソの商品なのだが、本来の投資対象のリターンは、為替変動で軽く吹き飛ぶ。
通貨選択型大流行のきっかけとなった野村米国ハイ・イールド債券投信(1月末設定)は、リーマンショック後に投げ売りされたリスク資産が値戻しする、そのタイミングにドンピシャとはまった。
だが、この投信の基準価額(価値)は5月末までの4ヵ月間で3割も上がったものの、リスク回避の動きが収まるにつれて収益率も低下し、10月の1ヵ月の収益率は年率2.6%と、今は「並」の姿に戻っている。
雨後の竹の子のごとく出てきた同種の追随商品も、いずれも運用成績は並かそれ以下だ。世の中にド度派手なリターンを継続してあげる商品などないことを、心して欲しい。
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本特集は、おいしい話に乗って火傷することなく、将来の安心を手に入れるための、「低コスト&分散投資」の完全ガイドだ。「何を?」「どのように?」「いつ?」買えばいいのか、実践情報を徹底網羅した。ぜひ手にとっていただきたい。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 小栗正嗣)