駆け引きではなく、共に進化するビジネスの形

ノブ 結局自由な環境にあったということから、この会社はスタートしている。つまりビジネスではあるけれど、「これをやらなくてはいけない」がないスタイルで、ビジネスをしている。

福本 そうですね、売上ノルマがあるわけではありませんからね。

――そのかわりに、無限大の価値を生み出すことを期待されているし、その期待のもとにお二人が仕事をしていることが窺えます。

ノブ 結果的に駆け引きのない、互いの価値を高め合っていけるようなビジネスをしていくと、お金だけではなく、信頼関係や温かい関係が生まれます。NOBUと取引をしている会社はそんな会社ばかりです。佐渡の日本酒の醸造元「北雪」とはもう20年来の付き合いをしているし、味噌、醤油やわさびの製造元とも、長い付き合いがあります。ビジネス上の駆け引きがなくなると、お互いにとても楽になって、いい結果を生んでゆくことができるようになります。

今、和食が無形文化遺産になったことで、和食の周辺を商品として扱うマツヒサ ジャパンにできることは増えていくと感じています。マツヒサ ジャパンは、少し高価かもしれないけれど、ユニークでクオリティとデザイン性が高いものをたくさん取り扱っています。「これこそがNOBUだ」と僕自身が自信を持っているものだし、2人には、ぜひ自信を持って売って行ってもらいたいと思っています。

純子 せっかく世界に発信するのであれば、私たちもクライアントには駆け引きなしでストレートに出したいというのが根本的な考えです。また一方で、プライベートで子どもが大変だったら、「じゃあ私がやっとくから子どものところへ行っておいでよ」と言えるような、分かりやすくてストレートな会社ですから。

福本 私たちがレストランのオープン支援をやってきた実績に対し、最近はNOBU以外の海外に出ていこうとする日本料理人やレストラン経営者からもご依頼をいただけているのが嬉しいです。私たちの、最短時間でレストランをオープンさせるノウハウを和食の海外進出に還元できれば、日本文化に対して良い貢献ができると思います。これからが楽しみです。

NOBUを一瞬で伝えるデザインはいかにして生まれるか(後篇)著者の右が松久純子氏、左が福本亜紀子氏。NOBU TOKYOにて