5大陸30都市へと展開しているNOBUのネットワークは、そのまま日本文化を発信するためのインフラになる。日本の様々な文化が今、NOBUのエクスペリエンスとともに世界へと伝わろうとしている。日本国内に新しい産業を生み、世界との新しいつながりをもたらす「絆」となること。それもまたマツヒサ ジャパンの大きなミッションだ。前回に引き続き、マツヒサ ジャパンの代表取締役・松久純子氏、福本亜紀子氏、そしてNOBU、Matsuhisaオーナーシェフの松久信幸氏に、マツヒサ ジャパンによる、これからの日本文化の発信について語っていただく。(取材・構成:森旭彦)

NOBUを通して世界へ伝える、日本の魅力

――竹の徳利もそうですが、日本から見てもクールであり、海外から見てもクールな演出がNOBUには溢れていますね。こうしたオリジナリティの高いアイデアはどうやって生み出すのでしょうか?

純子 私たちは常にコミュニケーションをしていて、3人はいつも動きまわっています。たとえば父はいつも世界中を飛び回って、いろんな店舗で人に出会って気付きを得ます。また、福本さんは持ち前の前向きな性格を武器に、何より外に出るのが大好きで、マーケティングや営業を積極的に進めます。そうした3人が生み出すシナジーによってアイデアが形になるのです。

また、和食がユネスコの無形文化遺産になったことも手伝って、今、日本のものは世界中に求められています。日本の特産品や、食文化、景観などを、NOBUを通して海外へ紹介するきっかけを生み出していける会社になれるといいなと思っています。

福本 たとえばNOBUで使っている杉箸は、奈良の間伐材を使っています。間伐材とは、山の手入れをする過程で伐採される木々のことです。本来捨てられるものを使っているのですが、この杉箸が「世界一美しい木目」とすら言われているのです。奈良において新しい産業をつくりながら、世界へと紹介し、さらにエコロジーに貢献している。こうした高い付加価値を持つ、ユニークなものこそを、私たちは追求して発信したい。NOBUで使われている竹の徳利についても、佐渡の青竹を使ってハンドメイドでつくってもらっているんです。

ノブ かつて竹の徳利は京都で作っていました。ある時、NOBUで扱っている唯一のお酒、佐渡の「北雪」の醸造元を訪ねた時、僕はたくさんの竹林があることに気がつきました。「今は京都で徳利をつくっているけど、佐渡でつくることはできないか?」――実現すれば佐渡にあるたくさんの竹林が産業になるかもしれないし、さらにNOBUでは、佐渡のお酒を佐渡の竹の徳利で飲むことができる。地元と密接に繋がって、お互いに利益があり、助けあうことができるようなビジネスを考えていくことは、僕たちの大切にしているビジョンですね。