人生はゲーム、
深刻をやめて真剣に楽しもう!
岸見 カウンセリングに来る方の多くは、深刻です。うつ病で「会社から半年休めと言われました」という方に「それなら休んで元気になりましょう」というと、怒る人がある。なぜなら、自分が「元気になってはいけない」と思いこんでいるからです。「気晴らしに旅行でもどうですか」と言うと、「職場からの電話を家で受けられなければ、遊んでると思われます」と言う。病気を治すための休みなのに、旅行に行くなんてとんでもない、と考えるわけです。
吉田 そんな人には何と言うんですか?
岸見 「悪いけど、忙しい職場の人たちは、休んでいるあなたのことなんて、これっぽっちも考えていませんよ」と伝えます。そう言って、「そうですよね」と笑えるようになって携帯電話を片手に旅に出かけられるようになる頃には、ほぼ良くなっていますね。
だから、仕事の悩みも、深刻さを落とすことが大切です。一方で「深刻さ」は落としても「真剣に生きること」が重要です。いい加減に生きていたら、人生は楽しくない。真剣に人生と向き合うことは大切だけど、深刻になることはありません。
ゲームと同じですよ。ゲームに負けたからといって深刻になる必要はない。もう一回やり直せばいいだけですよね。
吉田 ですよね! ぼくの本にも、だからコミュニケーションをゲームだと考えることが大切なんだと書きました。ゲームは、真剣にやらなければ面白くありませんが、深刻である必要はないですよね。
岸見 真剣に話をしても、うまくいかないことはもちろんあります。僕も講演の反応が良くないときなどは、落ち込みます。でもそうであっても、次の機会にがんばればいいだけの話です。そんな感じで深刻さを落とし、うまくいかなかったところを工夫して、改善していけばいい。
吉田 僕も、いつもそんなふうに考えています。現場で失敗したら、悪いのはキャスティングしたプロデューサーなんだから、とプロデューサーに「すみません!」とお詫びして、帰ればいい。
岸見 深刻さと真剣さの違いがわかると、人生はずいぶん変わってきます。「人生は、遊びです」というと、真面目な人ほど怒ります。でも人生は、楽しんでいいのです。コミュニケーションも遊びなのです。そういえば「コミュニケーションの目的はコミュニケーション」と本にも書かれていましたね。
吉田 はい、そうです! 自分がコミュ障だと思う悩みは棚に上げて、その場その場のコミュニケーションで気持ちよくなろうと集中するのが大切、ということが、本日の対談であらためて確信できました。岸見先生、今日は本当に、ありがとうございました!
(終わり)