知識一辺倒になり、
子どもも苦しんでいます
お勉強なんかも、昔は自然にしていましたが、敗戦後はとにかく勉強しないとダメというふうに変わってきました。
でも、知識を詰め込むようなやり方だから、子どもは飽きてくるんです。
お勉強は大事ですが、そればかりでなく一時、お手伝いをしてもらったりして、息を抜くようにしてやるのがいいんです。
お手伝いも頼むと、喜んでやってくれますよ。
それで今は進路で悩んでいる子どもは多いですよ。そっちに行くのが無理と思っているのに、親が無理にすすめている。それで、すごく悩んでいるんです。
実はわたしにも苦い思い出があります。
一人息子が高校から大学に進学するときのこと。本人は教育関係の仕事に就きたいのに、わたしはこれまでお世話になった人たちに少しでもご恩返しができればいいと思い、息子に医学部を受験するようにすすめたの。
先生も「君は医学部に向いている」とおっしゃってね。でも本人は絶対にいやなわけ。
それでも受けるだけ受けたらとすすめていましたが、結局、医学部を受ける前に別の学部に受かったので、医学部を受けずにすみました。本人はホッとしていましたよ。わたしもバカなことを言ったものです。
子どもは子どもなりに考えているのだから、その答えを親は待っていればいいのに、なかなか待てない。
子どもに心で目をかけていれば、気づきと発見があるけれど、それがないと親は自分の考えで押し通していっているんです。親というのは願望が大きいからね。
競争心が強くなっているのも敗戦後の特徴ですよ。
高校に入るときも、どこの子が入らなくても、うちの子が入ればいいというようなことをいう人もいました。
そうではなくて「みんなが入ればいいんだよ」というふうに、わたしは言っていましたけれどね。
そういう中で育つと、おむすびが食べられないという子が出てくるんですね。
中に何が入っているか、誰がどうやって握ったかわからないから食べられないって。全部に通じているんです。
だから「子どもの芽をつまないでください。ゆっくり待っていてね」という言葉を、敗戦後の今、子育て中のお母さんたちに、わたしは贈りたいのです。